妻は遺族年金をいくらもらえる？受給金額や年金の種類を徹底解説

遺族年金は、日本国内における重要な社会保障制度の一つで、働いていた人が死亡した場合にその家族が一定のお金を受け取れる制度です。

この制度は、夫が死亡したあとの妻の生活を支えるための重要な柱となっています。受給金額や種類は多くの人々にとって関心のある話題でしょう。夫の死によって生活の基盤が失われる立場にある妻は無数におり、遺族年金は彼女たちの大きな支えとなっています。

本記事では、妻が遺族年金としていくら受けることができるのか、それにはどういった条件があるのかといったことを解説します。また遺族年金制度の種類や、実際に受けるまでの流れ、救済措置としての遺族給付制度などについても触れます。

遺族年金とは？

遺族年金とは、配偶者や子どもなどの遺族に支給されるお金で、夫の勤労歴や加入期間、収入などにもとづいて計算されるものです。遺族が経済的な困難に直面しないよう支援するための社会保障制度であり、夫が加入していた保険に基づいて受け取れます。

日本国内では、高齢化社会が進展するなかで、遺族年金のような制度が非常に重要であるとともに、今後も重要性は増していくと考えられています。

具体的な金額や要件は種類によって異なるため、仕組みをしっかりと理解し、どのようにして受け取れるのかを知ることは、多くの家庭にとって重要な課題です。

遺族年金には2種類ある

遺族年金は単一ではなく、2種類あります。1つは遺族基礎年金で、すべての国民が対象となる国民年金の一部として機能しています。もう1つは遺族厚生年金です。厚生年金保険に加入していた人の遺族が給付対象となります。

これらの支給要件や金額、事業期間などは異なるため、それぞれの特徴と条件を理解することが大切です。

遺族基礎年金は、誰もが受け取れる基本的なものであるため、どのような条件で受けられるのか、どういった金額になるのかを理解するのは必須といえるでしょう。

一方の遺族厚生年金は、夫が厚生年金に加入していた場合のみ受け取れるため、加入していた会社の規模や業種、夫の収入などによって金額が大きく変動します。

このような違いを理解し、自分はどの制度からどれくらいの金額を受け取れるのかを把握しておくことが重要です。

遺族基礎年金

遺族基礎年金は、国民年金法に基づいて支給される遺族年金で、夫が国民年金を支払っていた場合に遺族に対し支給されます。

加入期間などによって具体的な額は異なりますが、基本的には全国民が対象となる制度です。そのため多くの遺族にとって受給対象となりうるものであり、要件や金額をきちんと理解しておくことが大切です。

ここでは以下の3つに分けて、遺族基礎年金を解説します。

• 支給要件
• 妻はいくら受け取れるか
• 受給期間

順番に見ていきます。

支給要件

遺族基礎年金の支給要件としては、以下の2つが挙げられます。

• 夫の被保険者等要件
• 夫の保険料納付要件

まず被保険者等要件です。これは夫が死亡日において以下のどれかの条件に当てはまっていることが求められるというものです。

1. 国民年金の被保険者だった
2. 国民年金の被保険者で、死亡当時国内に住民登録があり60～64歳だった
3. 老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上あった
4. 老齢基礎年金を25年以上の受給資格期間で受け取っていた

一つでも当てはまるのであれば、遺族には規定に基づいた金額が支給されることになります。

一方の保険料納付要件は、被保険者等要件の1または2に該当する場合に、以下のいずれかを満たさなければならないというものです。

• 死亡日の前々月までに、保険料納付済の期間が3分の2以上あった
• 死亡日の2ヶ月前の段階で、直近1年間に保険料の未払いがなかった

妻はいくら受け取れるか

遺族基礎年金の受給額は、以下のように規定されています。

• 67歳以下の場合：79万5,000円＋子どもの加算額
• 68歳以上の場合：79万2,600円＋子どもの加算額

「子どもの加算額」とは、子どもがいる場合にその数に応じて加算される金額のことです。以下のように規定されています。

• 1人目及び2人目の子どもの加算額：1人あたり22万8,700円
• 3人目以降の子どもの加算額：1人あたり76,200円

受給期間

遺族基礎年金を受け取れる期間は、原則として子どもが18歳に到達する年度末（3月31日）までとされています。留年などを考慮しないのであれば、子どもが高校3年生を卒業する月の終わりまでということになるでしょう。

ただし子どもが障害等級2級以上である場合には、上記の年齢の部分が「20歳を超えるまで」となります。

遺族厚生年金

遺族厚生年金は労働者が加入する厚生年金保険に基づく遺族への給付で、死亡した人が厚生年金を支払っていた場合、その遺族に対し給付されます。

遺族厚生年金も夫婦間での支給が一般的であり、夫の死亡時には受け取り手として妻の優先順位がもっとも高く定められています。

遺族厚生年金と支給額は、夫の厚生年金保険への加入期間や納付保険料、具体的なプランなどにもとづいて計算されます。ここでは以下の3つに分けて解説します。

• 支給要件
• 妻はいくら受け取れるか
• 受給期間

一つ一つ見ていきましょう。

支給要件

遺族厚生年金を受けるためには、夫が以下の5つのいずれかを満たしている必要があります。

1. 厚生年金保険の被保険者であるあいだに死亡した
2. 厚生年金の被保険者期間中に初診を受けた病気や怪我が原因で、初診日から5年以内に死亡した
3. 2級以上の障害厚生（共済）年金を受け取っていた
4. 老齢厚生年金を受ける権利があった
5. 老齢厚生年金を受ける資格を満たしていた

1および2については、保険料納付済み期間が3分の2以上を占めていなければいけません。また4および5については、保険料納付済期間・保険料免除期間・合算対象期間を合わせて期間が25年以上ある場合に限られます。

妻はいくら受け取れるか

遺族厚生年金の具体的な金額は、死亡した夫の老齢厚生年金の「報酬比例部分」の4分の3となります。

報酬比例部分とは、厚生年金の保険料を支払った期間中の報酬と、その加入期間に基づいて算出される数字のことです。老齢厚生年金・障害厚生年金・遺族厚生年金のいずれの給付においても計算の基礎となります。

65歳以上で老齢厚生（退職共済）年金を受ける権利があって、かつ夫の死亡による遺族厚生年金を受ける場合は、以下のどちらか高いほうが具体的な金額となります。

• 夫の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3
• 夫の老齢厚生年金の報酬比例部分の半分と、自身の老齢厚生年金の半分を合わせた額

受給期間

遺族厚生年金の給付は、加入者の死亡翌月から始まります。そして妻の場合、夫が死亡した時点での自身の状況によって、受け取れる期間が以下のように異なってきます。

• 夫の死亡時に子どもがいる場合または30歳以上の場合：一生涯受給できる
• 夫の死亡時に子どもがいない場合または30歳未満の場合：死亡した翌月から5年間

この規定は解釈によって変更できるものではないので、夫の死亡した日が非常に重要な意味を持ちます。

遺族年金を受給するまでの流れ

遺族年金を実際に受けるまでの流れはいくつかのステップから構成され、然るべき手続きを要します。まずは夫が死亡したことについて公的な確認を得ること、そして自分に遺族年金を受ける資格があるかをチェックすることです。

それ以降のステップは、おおむね以下のように進行します。

1. 必要な書類を準備する
2. 申し込み窓口で請求書を記入する
3. 請求書の記入が終わったら必要書類とともに窓口に提出する
4. 書類の提出から2ヶ月以内に年金証書が自宅に送られてくる
5. 年金証書の受け取りから約1～2ヶ月後に年金の振り込みが始まる

申請には専門的な知識の手続きが必要な部分もあるため、社会保険労務士や税理士などの専門家に相談するのもおすすめです。専門家の支援を受けることで適切な申請が可能となり、遺族の生活安定を円滑に進められるでしょう。

遺族給付制度について

遺族給付制度とは、死亡した人の扶養家族に対して支援を提供する複数の給付から構成される制度です。これによって、家庭が急な収入減少から生じる経済的な困難に対処できるようになっています。

ここでは以下の2つの制度について解説します。

• 寡婦年金
• 死亡一時金

順番に見ていきましょう。

寡婦年金

寡婦年金とは、夫が死亡した際に妻に支給されるもので、夫の死亡によって生じる経済的な負担を軽減する目的で設立されたものです。要件としては以下の2点が挙げられます。

• 夫が第1号被保険者として10年以上保険料を納めてきた
• 10年以上継続して婚姻関係にある

この2つを満たした場合、生計維持関係にあった妻に対して60歳から65歳になるまでもとづいた額が支払われます。

死亡一時金

死亡一時金は、夫の突然の死亡によって生じる費用に対応できるよう設けられた給付制度です。この一時金は、葬儀費用やその他の急な支出に充てられるのが一般的です。

死亡一時金を受けるためには、以下の2つの条件を満たさなければいけません。

• 夫が死亡日の前日において、第1号被保険者として36ヶ月以上保険料を納めていた
• 夫が老齢基礎年金・障害基礎年金のどちらも受けないまま死亡した

死亡一時金の額は、保険料を納めた月数に応じて12万円から32万円まで変動します。また保険料を納めた月数が36ヶ月以上ある場合には、8,500円が加算されます。

その他、夫の死亡時に妻に支給されるお金

夫の死亡時に妻に支給されるお金には、年金制度だけでなく、労災保険などの他の支援も含まれています。これらの給付は夫の労働条件や死亡の原因などによって異なるため、個々の状況を精査し、適切な申請と手続きを行わなければいけません。

ここでは労災保険の遺族年金と、遺族一時金について見ていきます。

労災保険の遺族年金

労災保険の遺族年金は、労働者が業務中の事故などで死亡した場合に、その遺族に支給される給付です。これは労働者が加入していた労災保険にもとづいており、労働者の収入や業務内容、事故の詳細などに応じて金額が決定されます。

申請手続きは比較的複雑であり、事故の詳細な調査や関連書類の提出などが求められるため、労働者の勤務先や労働局、専門家などとの連携が重要となります。遺族の生活を支える重要な給付であるため、適切な理解と手続きが不可欠です。

具体的な金額は、遺族の人数によって変動します。たとえば遺族が妻1人しかいなかった場合には、原則として給付基礎日額の153日分が給付されます。

労災保険の遺族一時金

労働保険の遺族一時金は、労災保険の遺族年金と同様に、業務中の事故による死亡時に支給されるものですが、一時金として一括で支払われる点が異なります。この一時金は、急な葬儀費用や初期の生活費などに充てられることが一般的です。

具体的な額は事故の状況や労働者の収入などに応じて異なり、原則として給付基礎日額の1,000日分となります。

申請手続きはある程度複雑なものとなることを、あらかじめ認識しておきましょう。適切な支給を受けるためには、書類の準備や関連機関との連携が重要となるため、専門家の支援を受けることも検討すべきでしょう。

遺族年金のことで悩みがあるときはサン共同税理士法人へ

遺族年金の申請や受給に関するさまざまな情報は、多くの人々にとって複雑で難しいものです。具体的な要件や申請手続き、金額の計算など、専門的な知識が求められる場面も多々あり、正しい手続きを行うための支援が必要になることもあります。

遺族年金のことでお悩みの方は、ぜひ弊社・サン共同税理士法人までお問い合わせください。

サン共同税理士法人には、遺族年金に関する専門的な知識と経験を持ったプロフェッショナルな人材が揃っています。お客様一人一人の状況に応じた、適切なアドバイスとサポートを提供する準備を整えております。

初回相談は無料となっておりますので、ぜひお気軽にご利用ください。

遺族年金に関するよくある質問

ここからは、遺族年金に関するよくある質問に回答します。

夫が死亡したとき妻は遺族年金をいくらもらえますか？

妻が受け取れる遺族年金の金額は、制度の種類によって異なります。

遺族基礎年金の場合、以下のように規定されています。

• 67歳以下の場合：79万5,000円＋子どもの加算額
• 68歳以上の場合：79万2,600円＋子どもの加算額

遺族厚生年金の場合は、死亡した夫の老齢厚生年金の「報酬比例部分」の4分の3です。

遺族年金をもらうにはどんな条件がありますか？

遺族年金を受けるためには、死亡した夫が国民年金か厚生年金に加入していたこと、一定期間以上の納付実績があったことが必要です。そのうえで、申請者が確かに夫の遺族であることの証明が求められます。詳細な条件は制度ごとに異なる場合もあるため、しっかり確認しましょう。

遺族年金のまとめ

遺族年金は、残された妻の生活を支える重要な支援制度です。遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類があり、要件や金額、時期が異なります。妻が受け取れる金額は、夫が加入していた制度や納付期間などに基づきます。

また遺族年金以外にも、労災保険に基づく遺族年金や遺族一時金があり、条件を満たしていれば一定の金額を受けることが可能です。

遺族年金制度は生活保障の一環として重要な役割を果たしており、遺族が経済的に困窮しないようにするための重要な措置です。遺族年金の受給に関する正確な理解と適切な申請が、遺族の生活を守り、未来を支える基盤となるでしょう。

本記事を参考にして、適切な支給を受けられるようになっておきましょう。