50歳男性が脱サラして居酒屋を開業するときの心構えとは
最終更新日:2022/06/27
学校を卒業してから40代後半までサラリーマンとして額に汗して働いてきた男性が「50歳を機に脱サラして居酒屋を開きたい」と考えることは、それほど突拍子のないことではありません。
そのような夢を持つようになったのは、自分が仕事で苦しんでいたときに、何度も居酒屋に救われたからでしょうか。それとも会社での出世が絶望的で、それなら「70代でも働ける仕事を始めたい」と思ったのかもしれません。
いずれにしましても、社会経験が豊富な分別ある男性が居酒屋を開くことは素晴らしいことです。
ただその年齢ですと失敗は許されないので、心構えを含めて入念な準備が必要です。
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「その歳で初めての店」だからこそこだわりをつくろう
元サラリーマンの50歳男性が開く居酒屋は、一定のニーズがあるでしょう。メーンの顧客層はやはり、自分より少し若い世代から定年直前の男性サラリーマンです。この年代の男性は「もうチェーン居酒屋には行きたくない」と考えています。なぜなら、それほど飲みも食べもしないので、安さより落ち着きを求めるからです。
また40~60代の女性もサブの顧客層になるでしょう。男性サラリーマンたちが、ママさんが経営しているスナックに行くように、熟年女性は人生経験が豊富なマスターが居る居酒屋を求めるはずです。
ですので、50歳で初めて居酒屋を開くときに注意しなければならないことは、こだわりです。豊富なメニューや豪華な食材、飲み放題コースややたら高価な酒は必要ないでしょう。それよりも重要なのは、こだわりのメニュー4、5品と、安いけどおいしいと評判の日本酒、地方で埋もれている焼酎、手入れが行き届いたサーバーで注ぐ生ビールです。
店内はおしゃれすぎず、簡素化しすぎず、今時すぎず、古すぎず、を心がけましょう。ポイントは、椅子にもテーブルにも酒を置く棚にも割りばしにも皿にもコップにも暖簾にも、こだわりがあることです。
高価なものは必要ありませんが、ストーリーがあるものを選びましょう。例えば「その皿いいでしょ。30代のころに骨董品にはまって、そのころ集めたものなんです」などと言えるとよいでしょう。
妻をこう説得しよう
50歳前の男性が脱サラして居酒屋を開くことの最大のハードルは妻の説得でしょう。妻はまず「なぜ安定した生活を捨てなければならいのか」と主張するはずです。
妻を説得するときに「男のロマン」というワードを使うことは禁物です。そうではなく、きちんと採算が取れることや、リスクヘッジしていること、居酒屋が失敗したときの次の道などを、理路整然と並べましょう。
つまり、単なる感情の高ぶりで「居酒屋のおやじ」に転身するのではなく、ビジネスとして有望だからその道に進むと説明したほうがいいでしょう。
そして、長年連れ添った妻を説得できる事業計画を打ち立てることができなければ、実際の居酒屋経営も軌道に乗らないでしょう。
客単価や客席の回転数、季節ごと曜日ごとの売上の変化、原価率などを推計してください。目標は「銀行の融資担当者が納得できる内容」です。そこまで緻密な計画を立てることができれば、妻も応援してくれるはずです。
バイトを雇わず1人でやるのはリスキー
30代で居酒屋を独立開業するのであれば、「1人でなんでもやる」方式は問題ありません。1人で仕入れ、仕込み、接客、調理、経理、税務までこなすと、休日どころか睡眠もろくに取れませんが、それでもなんとか乗り切ることができます。
しかし50代から慣れない居酒屋経営をする場合、そのような激務に陥ると店が繁盛すればするほど体力的に窮地に追い込まれます。
そのため50代の「初めての居酒屋おやじ」は、人を雇うことを考えましょう。仕込みだけ、経理だけでもいいので、自分でやらなくても店の魅力が落ちない業務は積極的に人に任せましょう。
つまりバイトの人件費も考慮した売り上げ計画を立てなければならないということです。
料理の腕もトークの力も自然には身につかない
中高年者が初めて飲食店の経営して失敗してしまうのは、「豊富な人生経験をフル活用すれば飲食店くらいできる」と過信してしまうからです。
特に40代後半のサラリーマンの場合、これまで1,000回以上居酒屋に通っている人も珍しくありません。それで「居酒屋のことなら若いマスターより知っている」と思って開業すると、半年経っても客が定着しないといった事態に陥るでしょう。
50歳で初めて居酒屋を始める人は、料理の腕とトーク力をしっかり磨いてください。最低でも半年、できれば2年くらいは実際に居酒屋でアルバイトしたほうがいいでしょう。
「あそこでしか食べられない逸品」を4、5品は用意しておきたいものです。そのためには、食材ごとに包丁を使い分けたり、独自の仕入れルートを確保したりしなければなりません。
また魅力ある居酒屋のおやじは100%聞き上手です。客の話を十分聞いたうえで2、3言気の利いたことを言うスタイルが望ましいでしょう。サラリーマン時代の癖が出て説教調の話し方になってしまうと、客はすぐに離れていってしまいます。
まとめ~男のロマンは心の奥底に忍ばせておく
「いえいえ、そんなに若くはないですよ。もう68歳です。居酒屋を始めたのは50歳からです。それまではサラリーマンをしていました」
このようなセリフを客にサラッと言える主人がいる居酒屋はとても魅力的です。この姿こそ、男のロマンです。
しかしロマンでは居酒屋はできません。ロマンが前面に出ている店主の前では、客は気持ちよく酔うことができません。
居酒屋のおやじはときに、自分を殺して客を立てる必要があります。50歳新人居酒屋店主に必要なのは、綿密な計画と修業と我慢です。