【日本政策金融公庫】資金計画書の書き方(必要な資金と資金調達方法)
最終更新日:2022/06/27
投資計画を作成した結果、自己資金だけでは資金が足りず、資金調達手段として融資制度を利用する飲食店開業予定の方は多くいらっしゃると思います。
今回は、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」又は「中小企業経営強力化資金」の申込で必ず提出が求められる『創業計画書』の記載事項中の資金計画について、どのような考えのもとに書けばよいかを解説していきたいと思います。
Contents
1.調達の方法
自己資金の欄
ご自身で貯金してきた金額を記載してください。
※飲食店開業融資前に支出した不動産関連費用、調査費、交通費等の飲食店開業前の経費についても自己資金にカウントして大丈夫です。
但し日本政策金融公庫の判断で認められないものもあります
親、兄弟、知人、友人等からの借入の欄
親族、友人等からの借入金がある場合の借入金額を記入しましょう。
※借用書は必ず作成しましょう。
親族等からの贈与は自分のお金に変化して入るため自己資金になります。
借入金か贈与かで、みなし自己資金になるかならないかで、かなり融資額に影響を及ぼします。
日本政策金融公庫からの借入の欄
融資希望額を記載します。
※現実的には融資の相場額を書くのが固い計画かなと思います。
<参考>
飲食店開業支援コラム 「飲食店初めての開業 創業融資の金額の決め方」
他の金融機関等からの借入欄
親族等又は日本政策金融公庫以外の金融機関からの借入を検討している場合のお借入金額を記載します。
補足になりますが・・・・
日本政策金融公庫と他の金融機関にダブルで開業融資申請する事を「協調融資」と言います。
「協調融資」は融資実行までかなり時間が掛かる事を想定してスケジューリングをして下さい。
実際に私が携わったケースでは3ヶ月近くかかりました。
また、日本政策金融公庫が融資のOK出したとしても、保証協会及び金融機関がOKを出さないと融資の実行がなされません。
保証協会付き融資の実行に至っては、営業許可書の発行が条件ですので、飲食店OPEN後にお金が入ってくる点ということも注意すべき点です。
つまり、日本政策金融公庫は設備資金融資、保証協会付き融資は運転資金のような設計になってくるということです。
そうでない場合は資金使途違反になる可能性が出てきます。
そのため、内装業者さん、厨房機器屋さんにも支払いが遅れる可能性がある旨は伝えながらスケジュールを組んでいった方がよいです。
高額融資の場合には、飲食店開業関連業者の協力体制が必須です。
※日本政策金融公庫が発行している 「新たに飲食業を始めるみなさまへ 創業の手引き+」 の11ページのチェック欄について
- □自己資金はコツコツと貯めていますか? → これは、自分で全く貯金をしていない人、コツコツ貯金する努力が出来ない人が事業の借入金を計画的に規則正しく返済できるのか?と暗に聞かれているのかなと思います。
- □自己資金の貯蓄過程は通帳などで確認できますか? → コツコツ貯金しているか?見せ金ではないかと言う確認です。
- □創業資金を借入する場合、どこに相談に行けばよいか知っていますか? → 資金調達の専門家に相談する場合は注意が必要です。
- □借入するための条件や借入金額の相場観を知っていますか? → 新創業融資制度では自己資金の9倍まで借入ができます。 中小企業経営強力化資金については自己資金要件なしと形式上はなっていますが、現実は当初の総投資額の1/3が1つの目安かなと思います。<参考>飲食店開業支援コラム 「飲食店初めての開業 創業融資の金額の決め方」
- □自己資金が少なく借入依存の計画になっていませんか? → 自己資金が少ないと言う方は参考にして下さい。 「1店舗目飲食店開業融資 そもそも土台にのっていますか?」
2.必要な資金 ・設備資金の欄
内装の見積金額,厨房機器の見積金額,食器類の見積金額
融資用の見積金額が実際金額とかけ離れすぎた場合には資金使途違反 となる場合があるため注意が必要です。
<参考>飲食店開業支援コラム「融資用の内装・設備の見積りは注意が必要です!」
安全圏内の運転資金まで考えたうえで総投資金額が調達金額を上回ってしまった場合には、厨房機器のリースも検討する必要があります。
日本政策金融公庫が発行している 「新たに飲食業を始めるみなさまへ 創業の手引き+」の5ページの「創業時の資金計画」と言う項目には以下のように記載されています。
「借入については、必ずしも希望通りの資金調達ができるとは限りません。中古設備を購入した場合やリースを活用した場合など、いくつかのケースを想定しておくと、いざというときに慌てないですみます。」
つまり、「総投資額が過剰と感じた場合にはリース契約も全然いいよ」と言う事です。
運転資金の欄
ここには飲食店開業時から軌道に乗るまでに必要と思われるであろう運転資金を月別に記載していきます。別途事業計画書参照と書いて、別途で作成した事業計画書を添付するのがよいと思います。
飲食店の開業運転資金はどのくらい用意した方がよいか?
この問いについて絶対的な正しい答えはないが、一つの目安としては、
「半年分の運転資金が必要かな」思います。
(但し、人口が少ない場所で開業の場合には1年分くらい必要かなと思います。)
その根拠は、日本政策金融公庫「新規開業実態調査」結果です。
日本政策金融公庫はとても多くの飲食店を支援しているのでこの実態調査はとても参考になると思います。
「新たに飲食業を始めるみなさまへ 創業の手引き+」の2ページ目「開業後についての調査結果」では、約6割の企業が、軌道に乗せるまでに半年超かかっていると言う統計が出されています。
軌道に乗らない状態と言うのはミドルの予想売上を達成していない状態を指し、「予想売上達成率の分布」を見ると、開業後1年間の実際売上で予想売上に到達した飲食店は38.8%しかいないという調査結果になっています。
また予算達成率70%未満と回答した方が17.1%。裏を返せば82.9%の飲食店は予算達成率70%以上を達成しているという結果です。
せっかく飲食店開業するのですからこの売上予想達成率70%を超えた82.9%に入っていてほしいと言う前提でお話します。
軌道に乗るまでの半年間、売上予想の7掛けを継続した場合、3割の売上高が足りないことになります。
もしその時に半年分の運転資金が手元にあれば、資金が十分足りる状況のため精神的に滅入らず冷静に飲食店を経営する事が出来るでしょう。
※以下を参考にして下さい。
・「飲食店開業事業計画書から売上編~3つの考え方」
・「飲食店開業!運転資金はどれだけ用意する?」
(創業手帳WEBに私大野晃が執筆したコラムです)
※必要な資金の日本政策金融公庫が見るチェックポイント代表例
- □出店予定地周辺の家賃・保証金が周辺相場と比べて高くはないですか?
→ 不動産契約の知識をしっかり身につける必要があります。(参考に「不動産契約の留意点!!」) - □2社以上から設備の見積書を取って、工事価格の妥当性や相場観をつかんでいますか?
→ 内装比較会社は沢山あるのでインターネット検索してみるとよいでしょう。
(参考までにArchiCloudさんの内装工事見積もり比較サイトのURLを添付させていただきます。)
ちなみに、ArchiCloudさんのサイトに「内装工事費は複数の業者に見積もりを取る事で確実に安くなります。何故なら、競争原理を働かせることが資本主義の原理原則だからです。」 と記載されています。
以上が、創業計画書,資金計画書の記載についての解説になります。
日本政策金融公庫の創業計画書の書き方の資金計画の書き方以外の事項については、下記にまとめさせていただきました。
<参考>飲食店開業支援コラム
「飲食店開業に際しての資金調達手段」
「日本政策金融公庫 飲食店創業計画書の書き方まとめ」
(①創業動機編②事業経験編③取扱商品・サービスの内容 セールスポイント編
④取引先 取引条件 従業員 お借入状況編)
4.まとめ
「現状では、いくらぐらい投資資金があり、希望の業態,物件で投資資金は足りるのか?」
上記にて解説してまいりましたが、資金計画書を作成する事がどれほど安全な開業につながるかをご理解いただけましたでしょうか?
飲食店開業予定者の多くは、不動産物件を見つけると「絶対にそこで開業しなきゃ」と言う気持ちになるようです。
しかしながら、投資資金、未来の資金繰り、損益を見てビジネスモデルが成立していなければ諦めて次の不動産物件に行く又は自己資金を更に貯めてから飲食店開業をすると言う考えも大事です!
1度飲食店を開業してしまうと後へは中々引き返せないです!
融資のために計画書を作成するのでなく経営に役立てるために計画書を作成しましょう!