パティシエはどのように菓子専門店を開業するのか?
最終更新日:2022/10/21
パティシエの専門学校を出て、一流店と呼ばれるスイーツ店で修業を重ねている人なら、「早く自分の店が持ちたい」と強く望んでいることでしょう。
しかしスイーツ系飲食店の競争の厳しさは、身をもって知っているはずです。独立したものの再び「雇われ職人」に戻ってきた先輩を何人もみていることでしょう。
とはいえ、繁盛している菓子専門店には、客がひっきりなしにやってきます。パティシエが菓子専門店を開き、経営を軌道に乗せるには何が必要なのでしょうか。
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スイーツ市場はまだまだ伸びる
「おいしいスイーツをつくる自信がある」と考えているパティシエや菓子職人見習いの方々は、独立開業をあきらめる必要はありません。矢野経済研究所によると、2015年の国内のスイーツ市場規模は2兆2,216億円で、2014年より3.9%も増加しているのです。
日本人は無類の甘いもの好きで、しかもこれからさらにスイーツを求めるのです。これだけの市場規模があればビジネスとして成功する確率も高くなるので、自分のオリジナルのスイーツを自分の店で売る夢は十分実現可能です。
最低でも5年は修業が必要
ただ、やみくもに独立開業することはおすすめできません。例えば、居抜き店舗を安く借りることができるので開業する、といった行動は菓子専門店では禁物です。なぜなら菓子専門店は、居酒屋や喫茶店と異なり、立地や経営者のキャラクターで評価が上がる業種ではないからです。
おいしいスイーツをつくれれば必ず繁盛店になるわけではありませんが、おいしいスイーツをつくれなければ絶対に繁盛店になることはできません。これはラーメン店にも同じことがいえます。そのため、菓子づくりの専門学校などを卒業してから、最低でも5年は一流と呼ばれる菓子専門店で働きましょう。
一流店で働く狙いは技術の習得が最も重要ですが、次に大切なのは材料や素材の購入ルートを把握することです。特にバター、小麦、牛乳、チーズ、フルーツ、チョコ、コーヒーといった品質が味を左右するベーシックな材料の購入ルートは重要です。これらの材料のプレミアム品を扱っている生産者や卸業者は、誰にでも売るわけではなく、客(店やパティシエ)を選びます。
一流の職人や一流の店にしか、一流の食材は届かないのです。一流店の従業員のうちに生産者や卸業者に人脈をつくっておき、独立開業したときにプレミアム食材を手に入れられるようにしておきましょう。また、例えば有名ホテルで菓子づくりを担当した実績があれば、自分の店を持ったときに宣伝に使えます。
菓子づくりより店づくり
開業資金にめどがついたパティシエは、そろそろ店づくりの検討を始めてください。スキルアップの取り組みは、一時中断してもいいくらいです。なぜなら一流の腕を持っていても、多くのパティシエは「経営の素人」だからです。
確かに材料費と粗利の計算は、パティシエは得意でしょう。安い原材料だけを使う割に見映えがよく高い値段で売ることができる菓子の知識は、自然に身についているはずです。
しかしそれだけでは店を黒字にすることはできません。損益計算書や貸借対照表などの経理、スタッフの雇用や給料や休日などの労務、店舗の家賃の妥当性、節税方法、価格交渉、マーケティング、接客といった知識は、自然には身につきません。そしてこうした領域の基礎知識がないと、せっかく開いた店もすぐに畳むことになりかねません。
スイーツは「食べなくても死なない」食べ物であり、ダイエットや健康志向の観点からすると「むしろ食べないほうがよい」といわれることすらあります。しかし、例えばマーケティングの考えが身についていれば、「糖質オフのクッキー」や「脂質を抑えたシフォンケーキ」といった商品で他店と差別化することができます。
価格交渉力や節税方法の知識があれば、ライバル店と同じ売上高でも、利益を多くすることができます。また、店内にイートインスペースを設けたほうがいいのか、カフェの要素を盛り込んだほうが客に喜ばれるだろうか、といった検討もしたいところです。
イベント、包装、ネット販売で経営を安定させる
菓子専門店は、正月、バレンタイン、ひな祭り、桜関連、子供の日、敬老の日、ハロウィン、クリスマスといったイベントに敏感になる必要があります。こうしたイベントに向けた限定スイーツを開発するだけでなく、自分の店を飾り付けしたりプチイベントを開催したりしたいところです。
また包装紙やリボンのデザイン性も凝りましょう。250円のショートケーキを入れる紙箱と、高級イチゴをふんだんに使った650円のプレミアムショートケーキを入れる紙箱が同じでよいはずがありません。「店のログマークがかわいい」と評判になれば、売上はさらにアップするでしょう。
そして焼き菓子や半生菓子を強化すれば、ネット販売が可能になります。ネット販売が軌道に乗れば、利益を1.5倍に増やすことも不可能ではありません。定番商品で売上を確保でいれば、オリジナルのスイーツづくりに専念する余裕も生まれ、「強い店」をつくることができます。
まとめ~経営感覚を持った職人になろう
パティシエが自分の店を成功させるには、経営感覚を持った職人になる必要があります。経営感覚のなかには、スタッフを上手に使う人材管理能力も含まれます。優秀で向学心あふれる若いスタッフを雇うことができないと、スイーツ店の経営はなかなか軌道に乗らないでしょう。
自分の店を持つには、夢を追いかけつつ、現実を見据える冷静な目が必要になります。
菓子専門店の開業に関するよくある質問
パティシエとして何年修業した方が良いですか?
5年間は修業しましょう。ただ、やみくもに独立開業することはおすすめできません。例えば、居抜き店舗を安く借りることができるので開業する、といった行動は菓子専門店では禁物です。
菓子専門店の経営を安定させる方法を教えてください。
菓子専門店は、正月、バレンタイン、ひな祭り、桜関連、子供の日、敬老の日、ハロウィン、クリスマスといったイベントに敏感になる必要があります。こうしたイベントに向けた限定スイーツを開発するだけでなく、自分の店を飾り付けしたりプチイベントを開催しましょう。
店づくりにも注力しましょう。
材料費と粗利の計算は、パティシエは得意でしょう。安い原材料だけを使う割に見映えがよく高い値段で売ることができる菓子の知識は、自然に身についているはずです。
それだけでは店を黒字にすることはできません。損益計算書や貸借対照表などの経理、スタッフの雇用や給料や休日などの労務、店舗の家賃の妥当性、節税方法、価格交渉、マーケティング、接客といった知識は、自然には身につきません。そしてこうした領域の基礎知識がないと、せっかく開いた店もすぐに畳むことになりかねません。