相続放棄の必要書類は?子ども、兄弟など続柄別に解説
「相続放棄をしたいのだけど、どのような手続きが必要なのかわからないな……」
「家族関係の違いによって、しなければならないことも違ってくるのかな?」
相続は、家族の死によって生じる法律上の過程であり、遺産を法定相続人に引き継がせるものです。しかしさまざまな事情から、相続を放棄したいと考える人も少なくありません。被相続人が負債を抱えていたケースなどがあるからです。
相続放棄は法律上認められており、任意で行えるものですが、一定の手続きと必要書類の提出が求められます。続柄によって必要とされる書類が異なる複雑さもあるため、事前に確認しておくことが重要です。
本記事では、相続放棄をする際に必要となる書類を続柄別解説し、手続きの流れや注意点についても触れていきます。
また、サン共同相続相談センターは、相続に関する法律の専門家と提携しており、相続放棄の手続きに関するサポートも可能です。相続の手続きについて不安がある方は、ぜひご相談ください。
目次
続柄に関係なく、相続放棄する際に必要な書類
相続放棄を行う際には、法律で定められた一連の手続きを実行しなければいけません。手続きを進める際、いくつかの重要な書類を用意する必要があります。
以下は、続柄に関係なく、相続放棄をする際に必ず求められる書類です。
- 相続放棄申述書
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
- 相続人の現在の戸籍謄本
一つずつ解説します。
相続放棄申述書
相続放棄申述書は、相続放棄を宣言する法的な文書です。相続人が相続放棄の手続きを行う基本的な書類で、相続を放棄する意向を正式に示します。、
相続放棄申立書には、相続人の氏名・住所・生年月日・相続放棄の意向・被相続人の情報などが必要です。
相続放棄申述書のフォーマットは通常、最寄りの家庭裁判所やWebサイトから入手できます。弁護士や司法書士に相談することで、相続放棄申述書の作成支援を受けることも可能です。
参考:相続の放棄の申述書(成人) | 裁判所
参考:相続の放棄の申述書(未成年者) | 裁判所
被相続人の住民票除票または戸籍附票
被相続人の住民票または戸籍附票は、相続放棄の手続きにおいて必須となる公的書類です。被相続人の基本的な個人情報を明示するものであり、相続放棄を申請する際には、被相続人の正確な情報を家庭裁判所に提供する手段として求められます。
住民票除票は、被相続人の最終的な住所や個人情報を示す書類です。一方の戸籍附票は、その戸籍が作られてから、除籍されるまでの住所を記録したものです。
住民票除票は、被相続人が最後に住んでいた市区町村の役所で取得できます。一方、戸籍附票は本籍地で取得します。
一部自治体では、オンラインでの申請と発行も可能となっており、インターネットから申請し郵送で書類を受け取ることが可能です。
住民票除票も戸籍附票も、取得にある程度の時間と手数料がかかるため、相続放棄の手続きを進める際には、事前に確認と準備を行うことが重要となります。
相続人の現在の戸籍謄本
相続人の現在の戸籍謄本は、相続人自身の身元や家族関係を証明するために必要な公的書類です。相続人の氏名・住所・生年月日・家族構成といった基本情報を含んでおり、相続放棄の手続きを行う際には必須となります。
相続人の現在の戸籍謄本は、法定相続人であることの証明や、他の相続人との関係を明示するためにも重要な書類です。
相続人の現在の戸籍謄本の取得は、相続人が登録されている市区町村の役所で行えます。窓口で申請書を提出し、必要な手数料を支払うことで入手可能です。
一部自治体ではオンラインでの申請と発行も可能となっており、インターネットで申請することで、郵送によって戸籍謄本を受け取れます。
相続放棄に必要な書類をケース別に紹介
相続放棄の手続きにおいては、相続人の続柄によって必要な書類が異なる場合があるため注意しましょう。以下では、相続人の続柄別に、必要となる書類を解説します。
参考: 相続放棄の申述に必要な書類
配偶者が相続放棄する場合
配偶者が相続放棄をする場合、共通する必要書類も含めると、以下の書類が必要です。
- 相続放棄申述書
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
- 相続人の現在の戸籍謄本
- 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
相続人の死亡の記載のある戸籍謄本が必要となることに注意してください。
また、夫婦の間に未成年の子どもがいる場合、未成年者の法定代理人としての同意も必要なため、同意書を提出することが求められる場合もあります。通常は家庭裁判所で提供されるフォーマットを使用して作成可能です。
子どもや孫が相続放棄する場合
子どもや孫が相続放棄を行う際には、以下のような書類が必要となります。
- 相続放棄申述書
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
- 相続人の現在の戸籍謄本
- 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
- 子どもが未成年の場合は、法定代理人の同意書
- 被代襲者(被相続人の子=代襲相続人の親)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
子どものケースと孫のケースで少し違うことに注意が必要です。
子どもが相続を放棄する場合、成人していれば自分の意思で相続放棄が可能となります。しかし未成年の場合は、法定代理人の同意を得なければいけません。多くの場合、法定代理人とは被相続人の配偶者(子どもの親)となります。
孫が相続する場合というのは、すなわち代襲相続をする場合のことです。代襲相続をする場合、被代襲者がすでに死亡していることを示すための戸籍謄本が必要となります。本来であれば相続人となるべきものがすでに死亡しているからこそ、代襲相続が発生する仕組みであるため、証明が必要になるからです。
親・祖父母が相続放棄する場合
親や祖父母が相続放棄をする場合、必要となる書類は以下の通りです。
- 相続放棄申述書
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
- 相続人の現在の戸籍謄本
- 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 被相続人の子と孫が亡くなっている場合、その子と孫の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 相続放棄するものより下の代の直系尊属が死亡している場合、その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
親や祖父母が相続放棄をするということは、親や祖父母が相続権を有しているということです。尊属が相続権を保有するのは、被相続人の下の世代に相続人となるものはいない場合のみとなります。そのため、下の世代に相続人がいないことを証明する手段としての戸籍謄本の提出が必須です。
兄弟姉妹・甥姪が相続放棄する場合
兄弟姉妹や甥姪が相続放棄をする場合に必要となる書類は、以下のようなものです。
- 相続放棄申述書
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
- 相続人の現在の戸籍謄本
- 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 被相続人の子と孫が亡くなっている場合、その子と孫の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 被相続人の直系尊属の死亡の記載がある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 被代襲者(被相続人の兄弟姉妹=代襲相続人の親)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
兄弟姉妹や甥姪が相続をするのは、被相続人に子どもがいないかあるいは死亡しており、かつ被相続人の直系尊属もすでに死亡している場合のみです。したがって、戸籍謄本などを提出することで、現状について家庭裁判所に証明する必要があります。
相続放棄の手続きの流れ
相続放棄の手続きは複数のステップから成り立っており、それぞれについて注意すべき点があります。順番に見ていきましょう。
手続きにかかる費用を用意する
相続放棄の手続きには、以下のような費用が発生します。
- 家庭裁判所に提出する必要書類の取得にかかる費用
- 専門家に相談する場合は、相談費用
費用の準備をするためには、まずすべての費用項目をリストアップし、それぞれの費用を確認しなければいけません。必要に応じて、費用を節約する方法や、無料で提供されているサービスを利用する方法も検討するとよいでしょう。
相続放棄に必要な書類をそろえる
相続放棄の手続きを進めるためには、まず必要な書類をそろえることが重要です。基本的には以下の3種類の書類を揃えなければいけません。
- 相続放棄申述書
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
- 相続人の戸籍謄本
上記に加えて、被相続人との続柄次第で追加の書類が求められるケースもあることに注意してください。
戸籍謄本は本籍地の役所の役所窓口で入手するのが一般的な方法ですが、郵送によって取り寄せることも可能です。ただし郵送での取り寄せはそれによる申請が必要であり、受け取れるまでに時間がかかってしまう場合があります。郵送を選ぶのであれば、早めに行動することを心がけるべきでしょう。
相続放棄申述書を記入する
相続放棄申述書は、相続放棄の移行を正式に表明するための重要な書類です。裁判所の公式サイトにフォーマットがありますので、ダウンロードして利用しましょう。
相続放棄申述書には、相続人の住所氏名、生年月日、被相続人との関係など基本的な情報を記入します。相続放棄の移行を明確に表明する欄も含まれているため、きちんと記載しましょう。
相続放棄申述書に誤った情報を記載した場合、手続きが遅れる可能性があるため、注意が必要です。
参考:相続放棄申述書
家庭裁判所に必要書類を提出する
書類を準備したら、家庭裁判所に必要書類を提出します。通常、相続放棄の手続きが行われるのは、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所です。
書類は家庭裁判所の窓口に直接提出するのが一般的ですが、郵送で提出する方法が用意されている場合もあります。直接窓口に提出する場合には、家庭裁判所の開庁時間内に訪れなければいけません。
また、書類を提出する際には手数料が発生する場合もあるため、事前に確認しておきましょう。
照会書が届いたら返信をする
家庭裁判所に相続放棄の申し立てをすると、10日ほど経った頃に家庭裁判所から相続放棄に関する照会書が送付されます。
照会書には回答を記入する欄があるため、必要事項を記入して家庭裁判所に送り返しましょう。
相続放棄申述受理通知書を受け取る
相続放棄の申述が家庭裁判所で受理されると、相続人に対して相続放棄申述受理通知書が発行されます。相続放棄が正式に受理されたことを示す書類であり、通知書が発行されたことをもって、相続放棄が完了したと考えて問題ありません。
相続放棄申述受理通知書は、通常の場合、郵送にて相続人の元へ届けられます。
通知書を受け取ったら、まず内容を確認し、必要に応じてコピーを作成して保管しておきましょう。もし通知書の内容に誤りや不明点を見つけた場合には、速やかに家庭裁判所に連絡し、必要な訂正や確認を行ってもらうことが重要です。
相続放棄申述受理通知書は、今後の法的手続きや記録のために重要な書類となる可能性があるので、安全な場所に保管しておきましょう。
相続放棄をする際の注意点
相続放棄をする際に注意すべき点としては、主に上の3つが挙げられます。順番に解説します。
相続放棄ができる期間は3ヶ月以内
相続放棄は、相続の開始を知った時から3ヶ月以内に済ませなければいけません(民法915条)。期間内に相続放棄を済まさなかった場合、相続を単純承認したものとみなされ、被相続人の財産や借金を強制的に相続することになります。
3ヶ月という期間は、相続人が相続放棄を行う意向を検討し、必要な書類を準備し、家庭裁判所に提出するために設定される期間です。しかし、いざその状況になってみると比較的短い期間なため、油断していると期限を過ぎてしまうことになりかねません。
3ヶ月以内に手続きを済ませる自信がない場合には、早いうちに専門家に相談することをおすすめします。
参考:民法915条1項
手続き前に遺産を処分すると相続放棄ができない
相続放棄の手続きを行う前に遺産を処分してしまうと、法律上相続放棄が認められなくなる可能性があります。
遺産を処分することは相続権の行使を意味し、相続放棄の意志がないことを示すものと判断されるからです。遺産の処分とは、たとえば、財産を売却したり、譲渡したり、使途を変更したりすることを指します。
したがって相続放棄を検討している場合には、手続きが完了するまで遺産に対していかなる処分も行わないよう注意することが必要です。
参考:民法921条
相続放棄が認められると、基本的に撤回することはできない
相続放棄が硬い裁判所で認められると、基本的にその決定をあとから撤回することはできません。相続放棄は法律上の手続きであり、一度認められると効果が固定され、原則として変更できないためです。
したがって、相続放棄の決定は慎重に行う必要があり、相続放棄のすべての結果と責任をあらかじめ十分に理解しておくことが重要となるでしょう。
相続放棄の決定をする際は、法律の専門家と緊密に連携し、適切なアドバイスを受けることが推奨されます。相続放棄の決定を撤回することは非常に困難であり、特別な法律的事情が必要となるため、事前にあらゆるメリットとデメリットを洗い出しておきましょう。
参考:民法919条
相続放棄の必要書類に関するよくある質問
相続放棄は法律的な手続きであり、関連する書類の準備や提出は非常に重要なプロセスです。しかしこのプロセスは複雑であるため、多くの疑問が生じる可能性があります。
ここでは、相続放棄の必要書類に関するよくある質問に回答します。
生前に相続放棄はできますか?
生前に相続放棄を行うことはできません。法律上、相続放棄は被相続人の死亡が確認されたあとにのみ可能であり、生前の相続放棄は認められていません。
相続放棄の意向は、被相続人の死亡後に家庭裁判所に提出する相続放棄申述書によってのみ、正式に表明することが可能です。
相続放棄の申述書について、書き方の例はどこで閲覧できますか?
相続放棄申述書は法律上重要な書類であり、正確に記入することが求められます。フォーマットは裁判所の公式Webサイトで提供されているので、ダウンロードして使用するのがおすすめです。
参考:相続の放棄の申述書(成人) | 裁判所
参考:相続の放棄の申述書(未成年者) | 裁判所
また、このページには手続きの概要や申し立て方法についても記載されているので、参考にしましょう。
まとめ
相続放棄は法律的に定められた手続きであり、適切な書類の準備と提出は非常に重要です。本記事では、相続放棄に必要な書類や手続きの流れ、相続放棄を検討する際の注意点について詳しく解説しました。
相続放棄の手続きは複雑であり、法律の知識が求められるため、専門家のアドバイスを受けることが推奨されます。
サン共同相続相談センターには、相続に関する法律の専門家と提携しており、相続放棄の手続きに関するアドバイスやサポートも提供可能です。
サン共同相続相談センターを通じて、提携している司法書士に繋がることができます。相続放棄の真実書の作成や必要書類の準備、家庭裁判所への提出など、一連の手続きをスムーズに進めることが可能です。
専門家のアドバイスを受けることで、法律上の要件を遵守し、相続放棄の手続きを生活かつ適切に行います。結果として相続に関するトラブルや不安を減らし、安心して手続きを進められるでしょう。
相続放棄についてお悩みの人は、ぜひサン共同相続相談センターまでお問い合わせください。