会計事務所の在宅パート!税理士がおすすめする「在宅経理」の働き方
こんにちは。サン共同グループの税理士の近藤昴と申します。
「テレワーク」と呼ばれる時間や場所を固定しない柔軟な働き方が広がる昨今。本拠地のオフィスと離れた場所からでも、情報通信技術を使って仕事をすることが可能となりました。
テレワークの波は税理士業界にも広がりつつあるものの、業界の特性から実現の壁にぶつかっている会計事務所は少なくありません。そんななか、サン共同は在宅経理としての働き方を広げるべく、完全テレワークを実施しています。
結婚・出産前に培った経理の知識を活かしたい方、介護で思うように出勤できない方、定年退職された後にもう一度経理の仕事に携わりたい方など、さまざまなライフスタイルの方が在宅パートとして活躍されています。
在宅ワークでの働き方は、なかなか知ることができないもの。今回は、在宅経理の働き方について解説いたします。
2020年に発生した新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、業種に関係なく多くの企業がテレワークを導入せざるを得ない状況になりました。
当初は社会的に混乱しましたが、通勤時間の短縮や家族との時間の確保など、テレワークのメリットを感じる人が次第に増えていったことは記憶に新しいでしょう。そのため、コロナ対策が緩和された現在も、出社とテレワークを組み合わせたハイブリッドワークを採用している企業が少なくありません。
税理士業界でも必要性に迫られた影響から令和4年度に税理士法が改正され、テレワークを導入できるようになりました。税理業界では女性の活躍も期待されており、育児と両立しやすいテレワークの導入にはメリットがあるはずです。
しかし、コロナ後は税理士業界ではなかなかテレワークが定着せず、出社をメインとした働き方をしている会計事務所が多く見られます。
税理士業界でテレワークが進まない理由、それは古い体質にあります。税理士業界には根強い紙文化があり、仕事に必要な資料は事務所に集まるシステムです。
クライアントから入手する資料が紙の郵送資料だと、事務所で受取・確認する必要があります。
こうした背景から出社主体の業務となるため、必然的に在宅業務は限定されてしまうのです。オンライン上でデータでのやり取りができない状況では、テレワークがなかなか進まないのは当然だといえるでしょう。
テレワークを進めるためには、システムの見直しが欠かせません。
クラウド会計ソフトの導入により銀行、クレジットカード、スキャンデータを紐づけて仕訳の自動化を実現することが在宅ワークのスタートとなります。
また、社内での確認体制・コミュニケーションもすべてオンライン上で完結させなければなりません。そのためには、フォーマット作成、電子化に対応した業務フローを検討する必要があります。
なによりの課題は、クライアントからご理解・ご協力を得ること。資料のデータ化やクラウド会計の導入をクライアントに説明し、ご納得いただき、これまでのやり方を変えるという一連のハードルがとても高いです。
こうした背景から、電子化に舵を切れない会計事務所が多いと思われます。
会計事務所・クライアント双方にメリットのある提案ができなければ、電子化への切り替えは失敗に終わってしまいます。実現には細心の注意が求められるでしょう。
ここまでお伝えしたように、税理士業界でのテレワーク実現は決して簡単ではありません。しかし、サン共同税理士法人では、在宅スタッフ・事務所スタッフともにテレワークの導入に成功しました。特に、在宅スタッフに関しては、ほぼ100%テレワークにより自宅勤務をしています。
弊社ではあらゆる業務をオンライン化しており、紙がほとんど発生しない作業体制で業務の効率化・テレワークを実現。全国どこからでもスムーズに働ける体制を整えております。
「サン共同税理士法人」には、50名以上の在宅パートの方が在籍しています。弊社ではスタートアップ期のクライアントに対して会計記帳、決算書作成、確定申告書作成の業務を行うことが多く、業務量は膨大です。より多くの業務を効率的に対応するために、クラウド会計ソフトを使用して、会計記帳業務・決算書作成業務を在宅パートの方に依頼をしています。
単純な会計記帳をパートの方に依頼するという取り組みは、他事務所でもよくあることです。しかし、サン共同の特徴としては、在宅パートの方に「チームの一員になっていただく」ことを重要視しております。
単なる丸投げでの業務依頼ではなく、「キューブ会議」と呼んでいるチーム会議に出席いただき、課題・ルール・進捗の共有などを行い、研修にもご参加いただきます。この会議には全国それぞれの拠点で活動するチームが集い、地域をまたいでも円滑に仕事を進められるようにシステムが構築されています。
ご本人のスキルに応じて、お仕事のレベルもアップ。より難易度の高いクライアント対応、確定申告書の作成、コラム作成などもご対応いただくこともあります。
現在、在宅パートの方には下記のような業務を依頼しています。担当者のスキルに応じて依頼業務の範囲は異なるため、この限りではありません。スタッフ社員の指導を受けながら徐々にレベルアップしていただけるように、新しい業務にどんどんチャレンジできる環境を整えています。
在宅パート業務を担当している方には未経験の方もいますが、割合としては会計事務所・経理経験者が大多数を占めます。未経験の方であれば、会計記帳業務の基礎となる簿記2級以上の資格・知識は必要になりますが、それよりも業務を通して学ぶ姿勢が大事だと考えています。
サン共同では、在宅パートの方を単なる単純作業を行う人とは思っていません。弊社ではスタッフ全員の「人の成長」を最重要視しており、在宅パートの方にもご自身の手で可能性を広げてほしいと考えています。
会計記帳の未経験者・経験者に共通する必要なスキルを下記にまとめました。業務を行う上でのマインド的な部分が多くなっています。
向上心
在宅パートの方には、会計業務・税務というプロフェッショナル領域の作業をお願いするので、常に新しい知識が求められます。
サン共同としては、現場での指導と研修で必要な知識・実務のインプットを行いますが、ご本人の向上心がなければ仏造って魂入れず。
どれだけ時間と労力を費やして業務にあたっていただいても、肝心な点が抜け落ちてしまうと考えております。在宅パートの方には成長に対する意欲、向上心を持って業務を行っていただきたいです。
周りの人への感謝
弊社ではクライアントからお仕事をいただき、担当のスタッフが業務を設計して在宅パートの方へ依頼します。
在宅パートの方のPCをセットアップしているITチーム、労務手続きをまとめてくれている人事などのバックオフィスチームもいます。
サン共同での仕事では、ご自身の業務にさまざまな人が関わっていることを知っておいていただきたいです。常に周りの人たちに感謝を伝えられる、謙虚な気持ちを持つ方とお仕事がしたいと思っております。
会計知識
在宅パートの方には主に会計記帳業務を行っていただくので、簿記の知識はマストです。
日商簿記2級以上の知識または会計事務所・経理経験が必要となります。日商簿記2級の合格率は平均で約20%。つまり、10人が受験して2人しか受からない資格です。
出題範囲が広く、求められる知識が多いため、難易度が高い資格ではありますが、だからこそ高水準の仕事をお任せできます。やりがいをもって働きたい方は、ぜひ積極的に習得していただきたいです。
ITリテラシー
先ほどお伝えしたように、在宅パート業務の実現にあたって、オンライン化はマスト。
テレワーク実施のために、最低限のITリテラシーが必要となります。
システムを組むわけではないので、PC、ソフト、オンライン会議にアレルギーがない程度のリテラシーで問題ありませんが、効率化のために使いこなすぐらいのマインドがあると頼もしく感じます。
在宅パート業務はテレワークのため、自宅で一人で作業をすることになります。余計なストレスがかからないというメリットは感じられても、業務の管理体制に不安を覚える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ご心配は不要です。
在宅パートの方には「キューブ」という拠点ごとのチームに所属していただきます。そして、キューブメンバーの指示のもと業務を行うという、チームの連携が感じられるシステムを構築しています。
サン共同は、下記のような業務管理体制で在宅パートの方へ業務を依頼しています。
ここでお伝えしている情報は2023年10月時点の話であり、今後も新しいシステムを導入し、進化していく予定です。
業務管理
弊社の業務管理では、「kintone」をメインで使用しています。kintoneはチームで使うクラウドサービスで、バラバラになりがちな情報を簡単に一つにまとめることができます。
直感的な作業で使いやすく、出社管理、業務時間管理、日報提出、経費精算、業務レビュー依頼などをまとめています。
コミュニケーション
コミュニケーションツールは、「chatwork」を採用しています。初めての方でも使いやすいシンプルなチャットツールなので、在宅ワークが初めての方でも抵抗を感じにくいでしょう。
チャットだけでは不十分な場合は、補足的に電話やweb会議による相談、議論をすることもあります。
研修
常に知識や情報を取り入れられるように、研修にも力を入れています。
主に行っているのは、週1回のキューブ会議での進捗報告、ルール確認、最新の会計・税務情報のアップデートなどです。
また、LMS(Learning Management System)と呼んでいる自社システムにより、いつでもどこでも過去の研修を動画視聴することができます。
LMSは過去の研修動画がまとまっている社内サイトであり、研修版YouTubeのようなものをイメージしていただけるとわかりやすいでしょう。
テレワークに必要な環境
テレワークに必要な自宅環境としては、インターネット回線とPのC主に2つが挙げられます。
この2つさえあれば仕事ができますが、補助的にサブモニター1つ、欲を言えば2つあると、業務の効率がぐんと上がります。
ネット
現在は多くの家庭でネット環境が整っているので、改めて準備する必要はないでしょう。
なお、業務上で動画のような重いデータを扱うことはありませんが、研修で動画視聴をすることはあります。YouTubeを無理なく視聴できるくらいのネット環境があれば十分です。
PC
PCは会社から貸与いたします。そのため、お手持ちのPCを使っていただく必要はありません。
ITチームが業務に必要なアプリ、環境を整えたPCをご自宅に郵送するので、PC受け取り後すぐに業務を開始することができます。
サブモニター
サン共同の業務では、すべてをPC画面上に表示させて対応しており、PC画面が1つだと作業スペースが足りないおそれがあります。
そのため、不足分を補えるように、サブモニターの利用を推奨しています。
サブモニターを利用すると、どうしてもモニターの定位置を決めて作業場所を確保しなければならないので、そのぶんのスペースが必要になります。
ご自宅の空きスペースとの相談になりますが、できれば効率化のためにもサブモニターをご利用いただきたいと考えています。
なお、希望者にはサブモニターの貸与を行っており、別途購入などの必要はございません。
テレワークのメリットは、周りの邪魔が入らず、好きなペースで仕事ができるという点にあります。
しかし、同時に自宅での作業となることから、うまくオンオフを切り替えないと仕事モードにならないというデメリットもあります。
弊社の在宅パートの方からお聞きした在宅ワークの主なメリットは下記のとおりです。
- ・毎日会計事務所や事業会社等に出社しなくていい
- ・通勤で満員電車に乗るストレスがない
- ・あたたかい食事や冷えた飲み物などを好きなようにとれる
- ・無駄話をしなくてよい
- ・育児や介護の状況に合わせて自由に仕事できる
- ・自宅だと家族の理解が得られやすい
- ・家族が病気になったときに対応しやすい
- ・リラックスした環境で仕事に集中できて生産性があがる
- ・食事が自宅になるので昼食代・ドリンク代を節約できる
- ・在宅向けの研修制度で知識が増える
- ・新しい仕事に挑戦して成長できる
- ・過去に働いた会計事務所の経験をそのまま生かすことができる
このように、テレワーク特有のメリットはさまざまあります。
上記のようなメリットに惹かれる方には、おすすめの働き方だといえるでしょう。
在宅パートの方に依頼している業務は多種多様です。ご本人がステップアップできれば、最終的には確定申告書の作成までご対応いただいております。
ここでは、会計業務を主に担当している在宅パートの仕事内容について、一例をまとめてみました。
- ・クライアントに資料依頼の連絡
- ・クライアントに問い合わせ内容の下書き
- ・入手したデータの整理・フォルダへの保存
- ・クラウド会計ソフトへの会計仕訳入力
- ・試算表の作成
- ・決算書の作成
- ・事業概況書・勘定科目内訳書の作成
- ・クライアント報告資料の基礎データの集計
- ・税務届出書の作成 など
上記の業務内容だけでなく、他にも幅広い仕事を依頼しています。
得意分野の知識をより深めたい方にも、新しいタイプの仕事に挑戦したい方にも、きっとやりがいを感じていただけると思っております。
在宅パートの方には、仕事とプライベートを両立し、充実した生活を送っている方が多くいらっしゃいます。
働き方の一例として、サン共同で活躍されている在宅パートの方の一日のスケジュールをご覧ください。
幼稚園や保育園に通う小さなお子さんを育てている方も、無理なく両立されています。お子さんを園に預けてから6時間の間で、ランチの時間もしっかり確保。
効率的に仕事をこなし、お迎え後に買い物に行く時間をとることもできます。
子育てをしながら毎日出社していると、両立に苦しむ場面が出てくるもの。
子どもの平日行事を諦めたり、急な体調不良で同僚に迷惑をかけてしまったりと、ストレスを感じる場面が少なくありません。
しかし、在宅パートとして働いていると、仕事を調整することで気兼ねなく平日行事に参加できますし、急病時にも自宅でお子さんに寄り添うこともできます。
ここからは、サン共同の在宅パートをご検討されている方から実際に寄せられた質問にお答えします。
入社試験はありますか?
履歴書と職務経歴書のご提出後、Webにて適性検査と筆記試験を受けていただく流れです。この試験の結果、面接に進んでいただく方は対面かオンラインにて面接を実施しております。
どのような方が働いていますか?
在宅パートの方は、会計事務所での勤務経験はあるものの、現在お子さんがいて出社が難しいという女性の方がほとんどです。
なかには副業として働かれている方もいらっしゃいます。一定の収入を確保しながらプライベートを優先し、自由な働き方を実現できるのは大きなメリットだといえるでしょう。
給与・報酬はどのように計算されていますか?
給与・報酬は仕訳数による出来高制ではなく、能力に応じた時給制です。
テレワークを行う正社員と同様に働くため、勤務時間に応じた給与体制を採用しています。
社内の規定に基づき、時給・ランクを設定させていただいており、成長次第で時給アップも可能です。
スケジュール管理、業務報告、勤怠管理はどのように管理されていますか?
スケジュール管理はGoogleカレンダー、業務報告・勤怠管理はkintoneを使用しております。
例えば、ご自身が金曜日を定休日としている場合には、Googleカレンダーに休日と表示してチームメンバーに出勤状況がわかるようにしています。
チームメンバー間で勤怠状況をあらかじめ共有できるため、仕事の負担が重なるような事態も避けられます。
在宅経理スタッフさんはどちらにお住まいの方が多いですか?
東京を中心に一都三県にお住まいの方が多いですが、大阪府・兵庫県など関西地方の方、福岡県・沖縄県の九州地方の方もいらっしゃいます。
在宅勤務地は全国どこでも大丈夫です。サン共同は完全テレワークに対応しているため、来社必須ではありません。
オフィスから遠い場所にお住まいの方でも気兼ねなくご応募いただけます。
社員とのコミュニケーションはどのように行っていますか?
基本はチャットツールであるChatworkをベースに質問・報告などを行っていただきます。
担当の社員とは必要に応じてオンライン会議を設定して、不明点の確認や電話での質問を行っています。
週1回実施されるオンライン定例のキューブ会議にも参加していただくので、会議内でもコミュニケーションの機会があります。
スタッフ間での交流が盛んなため、自宅にいながら社会とのつながりを感じながら働くことができる環境です。
それでいて必要以上に人間関係にストレスを感じずに済むのも、在宅パートのメリットだといえるでしょう。
勤務時間帯は自由に選ぶことができますか?
可能です。お子さんが学校に行かれている間の9~16時という方が多いですが、早朝に集中して作業をしたい方、家事が終わった夜に作業をしたい方などもいらっしゃいます。
ライフスタイルに応じて柔軟な働き方を選べるのも、在宅パートの魅力。ご相談いただければ、ある程度ご希望に沿った自由なスケジュールが可能です。
税理士になるために勉強中の方にも、在宅経理の仕事はおすすめです。
税理士試験は合格までの道のりが決して容易ではなく、何年もの時間をかけて挑み続けることになります。
私も8年間もの時間を費やし、その間に税理士事務所に就職もしました。受験勉強と仕事の両立はとてもハードなので、仕事の負担を少しでも減らしたいのが本音です。
在宅経理の仕事なら通勤に時間をかけることなく自宅で効率的に働けます。
しかも、業務内容が将来につながるため、受験生の労働環境としては理想的といえるでしょう。勉強に打ち込みながらも一定の収入を得たい方は、ぜひご検討ください。
在宅経理の仕事を志望する方には、子育てや介護、年齢などの理由で仕事を諦めてきた方が多くいらっしゃいます。
しかし、そういう方にこそ、在宅経理という働き方は社会復帰のチャンス。
持ち前のキャリアや知識を活かして働くことにより、自分自身により高い価値を感じられるようになるでしょう。
成長によってキャリアアップが叶えば、より高い収入も望めます。サン共同の在宅経理の仕事で、新たなスタートを切ってみませんか?
このコラムを執筆した税理士
近藤昴・税理士
サン共同税理士法人・横浜オフィス所長
東京地方税理士会 税理士登録:2013年 税理士登録番号:123285
2008年5月よりデロイト トーマツ税理士法人GES部門に勤務し、海外拠点を多く持つ日本・海外企業に対する国際人事異動に関するアドバイザリー業務などに従事。
2011年11月 ビジネスタックスサービス部門に異動し、約9年間勤務。マネジャーとして国内上場企業や外資系企業の税務コンサルティング業務及び税務コンプライアンス業務、税務顧問及び業務効率化提案などを行ってきた。
2020年12月、約12年間マネジャーとして勤務したデロイト トーマツ税理士法人を退職。
2021年1月にサン共同税理士法人に参画し、同月、横浜オフィス所長に就任。