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TOP > 税務 > 開業届とは?提出するメリットや書き方、提出方法などを徹底解説

開業届とは?提出するメリットや書き方、提出方法などを徹底解説

開業届とは?提出するメリットや書き方、提出方法などを徹底解説

新たに事業を開始したときに、税務署や地方自治体へ提出すべき書類に開業届があります。必要な手続きは一度で済ませたいものですが、開業届を提出するだけで済むのか、ほかに必要な書類があるのかなど、迷うことも多いのではないでしょうか。

開業届とは、事業を開始したときに管轄税務署へ届け出る書類です。確定申告により所得税と消費税を納める旨を、納税地の管轄税務署へ宣言するために提出します。

しかし、事業を始めるとなると、開業届以外に必要な手続きがあり、作業漏れがあると手間が増えるうえに、高い節税効果が得られない恐れがあります。本記事は、初めて開業届を作成する人にもわかるように、開業届の提出方法とメリット・デメリットを詳しく解説します。

目次

開業届とは

開業届とは、個人事業を始めたときに管轄税務署へ届け出る書類です。正式名称を「個人事業の開業・廃業等届出書」といいます。

個人で事業を始めたら、1年分の所得を計算し、所得税や消費税を納めなければなりません。給与天引きで所得税を納付する給与取得者とは納税の方法が違います。そこで、開業届を提出し、確定申告により所得税と消費税を納める旨を管轄税務署へ申告します。

開業届は国に提出する書類ですが、事業を営んでいると、地方自治体へも税金を納めなければなりません。地方税に関する書類は、事業所がある自治体へ「事業開始等申告書」を提出します。

 

開業届は誰が提出する?

開業届は、原則として開業する本人が提出します。提出方法は、3種類です。

  • 管轄税務署へ持参
  • 管轄税務署へ郵送
  • e-Taxによるオンライン申請

税務署へ持参する場合とオンライン申請においては、代理人による提出も可能です。代理人が窓口へ提出する場合は、開業届のほかに以下の準備をします。

  • 委任状
  • 代理人の顔写真付き身分証明書
  • 開業する本人のマイナンバーカードまたは通知カード

オンライン申請は、関与している税理士による代理申請が可能です。

 

開業届の提出期限は?

開業届は、開業した日から1か月以内に提出しなければなりません。1か月後が土日祝日などの閉庁日にあたる場合は、翌開庁日が提出期限です。

提出期限を過ぎた場合のペナルティはありません。しかし、3月15日までに手続きを終えなければ、同年度は原則として青色申告ができなくなってしまいます。青色申告ができないと、青色申告特別控除が受けられなくなるため、開業したら早めに届け出ることをおすすめします。

 

開業届の入手方法(ダウンロード方法)は?

開業届フォームの入手方法は、4通りあります。

  • 管轄税務署の窓口でもらう
  • 国税庁のホームページからダウンロード
  • e-Taxソフトを利用して作成
  • 市販の開業届作成ソフトを利用して作成

e-Taxソフトを利用した作成は、オンライン申請のときに利用します。オンライン申請は、毎年行う確定申告にも利用できるため、登録しておくと便利です。

市販の開業届作成ソフトを使うと、必要事項を入力していくと、簡単に開業届が作成できます。なかには、個人事業主が開業するにあたって必要な書類がすべて作成できるソフトもあるので、入力のしやすさなど、希望にあったソフトを選ぶとよいでしょう。

参考:個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁

 

開業届を提出するメリット

開業届を提出するメリットは、主に4点です。

  • 青色申告制度を利用できる
  • 屋号を名義とした銀行口座を開設できる
  • オフィス契約や融資の審査に使える
  • 職業を証明するのに役立つ

最大のメリットは、青色申告制度を利用できることです。青色申告は、白色申告に比べて経費の範囲が広く、青色申告特有の控除制度があるため、高い節税効果が期待できます。ほかにも、事業の実態を証明できるので、屋号の銀行口座が作れたり、職業を証明できたりするメリットがあります。

 

青色申告制度を利用できる

開業届を提出する最大のメリットは、節税効果が高い青色申告制度を利用できることです。確定申告には、青色と白色の2種類があります。主な違いは以下の通りです。

青色申告制度 白色申告制度
メリット
  • 青色申告控除が最大65万円
  • 家族への給与を経費にできる
  • 赤字を3年間繰り越せる
  • 30万円未満の減価償却資産は一括経費
  • 申告手続きが簡単
デメリット
  • 作成する帳簿の種類が多い
  • 所得が低い場合も確定申告が必要
  • 節税のメリットが少ない

青色申告制度を利用する場合は、開業届に加えて「所得税の青色申告承認申請書」を管轄税務署に提出します。期限は、確定申告の対象となる年の3月15日です。なお、その年の1月16日以後、新たに事業を開始した場合には、その事業開始日から2ヶ月以内となります。

参考:No.2070 青色申告制度|国税庁

 

屋号を名義とした銀行口座を開設できる

開業届を提出すると、屋号を名義とした銀行口座を開設できます。事業用に個人口座を利用しても問題はありませんが、個人名義と屋号が違う場合、振り込む側が戸惑う恐れがあります。

屋号を名義とした銀行口座を開設すれば、屋号と口座名義が一致するため、わかりやすい点がメリットです。さらに、事業用に口座を作ることで、資金の流れが見やすくなります。経理処理が効率化できる点もメリットです。

屋号を名義とした銀行口座の開設に必要な書類は、金融機関により異なります。しかし、多くの金融機関で以下のような書類が必要です。

  • 本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
  • (開業して間もない場合)開業届
  • (事業開始から数年経過している場合)確定申告書

信頼性の高い屋号名義の口座が作れることは、これから事業を営む個人事業主にとって、大きなメリットです。

 

オフィス契約や融資の審査に使える

事業の種類によって、店舗や事務所を構えなければならないことがあるでしょう。また、事業規模によっては、融資を受けなければならないこともあります。

オフィスの契約や融資の審査を受けるときは、事業の実態を証明しなければなりません。事業の実態を証明する書類として、開業届を求められるケースがあります。

審査を受ける場合、開業届のほかに以下のような書類が必要です。

  • 事業計画書
  • 本人確認書類(運転免許証やパスポート)
  • 許認可証のコピー(飲食店など営業許可が必要な場合)

オフィスの契約や融資の審査に必要な書類は、審査を受ける機関や事業内容などにより異なります。開業届があれば、事業の実態を証明する書類として提出できる点がメリットです。

 

職業を証明するのに役立つ

開業届は、職業を証明するためにも役立ちます。フリーランスや個人事業主は、開業届があれば職業を証明できます。

会社員の人は、勤務先から社員証や在職証明書により職業の証明が可能です。しかし、開業届を出していないフリーランスの場合は、いくら事業を営んでいても、公的に職業を証明するのは難しいでしょう。

職業の証明ができないと、以下のような場面で不利益をこうむります。

  • クレジットカードの発行
  • 外国人労働者のビザ申請
  • 保育園や学童クラブへの入園
  • 一部私立学校の入学願書
  • 職業証明が必要な資格取得
  • 住宅ローンや賃貸物件の申し込み
  • 転職や就職

職業の証明は、生活のあらゆる場面で求められる可能性があります。フリーランスや個人事業主が職業を証明するときは、開業届が有効です。

 

開業届を提出するデメリット

開業届を提出するデメリットは、3点です。

  • 配偶者の扶養に入っている場合には注意が必要である
  • 失業給付を受けられない可能性がある
  • 青色申告にする場合

配偶者の扶養には、所得税と社会保険の2種類の扶養があります。それぞれ要件が違うため、違いに注意しておかなければなりません。

失業保険の受給を考えている場合は、要件を確認しましょう。また、青色申告にするかどうかは、今後の事業展開と自身の希望を踏まえて検討する必要があります。

 

配偶者の扶養に入っている場合には注意が必要である

扶養に入っている人が開業届を提出した場合、扶養から外れる恐れがあります。扶養は、所得税と社会保険の2種類です。それぞれ詳しく解説します。

所得税の扶養に入っている場合、一定の要件を満たしていれば扶養のままでいられます。扶養対象者の要件は、以下の通りです。

  • その年の12月31日時点で16歳以上の親族(6親等内の血族および3親等内)または自治体から養護を委託された人、民法規定による配偶者のいずれかに該当
  • 納税者と生計を一にしている
  • 年間の合計所得金額が48万円以下
  • 青色申告者の事業専従者または白色申告者の事業専従者でないこと

扶養控除の要件には、雇用形態はありません。合計所得金額が48万円以下で、生計を一にしていれば、扶養控除が受けられます。

一方、社会保険の扶養は、加入している保険組合により考え方が異なるため、注意が必要です。開業届を提出する前に、加入している保険組合へ確認しましょう。

 

失業給付を受けられない可能性がある

開業届とは、事業を開始したことを知らせる書類です。離職後に開業届を出すと、求職者にあたらないと判断され、失業給付が受けられない恐れがあります。失業給付を受けるための要件は、以下の通りです。

  • ハローワークへ求職の申し込みをし、積極的な求職活動があるにもかかわらず、職業に就くことができない失業状態
  • 離職の日から2年以内に12か月以上、雇用保険に加入している

ただし、要件を満たせば、再就職手当を受給できる可能性があります。再就職手当とは、失業の認定を受けた日から早期に就職または事業を開始した場合に受け取れる手当です。再就職手当は、8つの要件をすべて満たした場合に受け取れます。

開業するための退職では失業認定されないため、注意が必要です。

参考:再就職手当のご案内|ハローワークインターネットサービス

 

青色申告にする場合

確定申告で青色申告を希望する場合、開業届の提出が必要です。確定申告に青色申告を採用すれば、より高い節税効果が期待できます。しかし、事務作業の手間が増える点や、必要書類を提出しなければならない点に注意が必要です。

青色申告にする場合は、以下のような手続きと事務作業の手間が発生します。

  • 所得税の青色申告承認申請手続
  • 開業届の提出
  • (青色事業専従者給与を支払う場合)青色事業専従者給与に関する届出
  • 仕訳帳や総勘定元帳などの帳簿書類、損益計算書と貸借対照表などの決算書類の保管

より高い節税効果を期待するのであれば、複式簿記による記帳が必要です。作成する帳簿類が増えたり、青色申告にあわせた決算書類を作成したり、手間が増える点は注意しなければなりません。

 

開業届を提出する手順

開業届が受理されるまでの作業に煩雑なものはありません。具体的には、3つのステップを踏みます。以下のようなものです。

ステップ1:開業届を作成する

ステップ2:税務署に開業届を提出する

ステップ3:提出したあとは控えを保管しておく

本章では、開業届を提出する方法をステップごとにご紹介します。

 

開業届を作成する

まず、開業届を入手し、必要事項を記載します。開業届は、管轄税務署の窓口もしくは国税庁のホームページからダウンロードによる入手が可能です。

開業届には、提出用と控用があります。手書きで作成する場合は、提出用と控用の両方に記入が必要です。開業届は、押印する箇所もありません。調べて記載する事項はマイナンバーのみです。

市販の開業届作成ソフトを使って作成する場合は、必要事項を入力すれば、開業届が作成できます。e-Taxソフトを利用して開業届を作成すれば、そのままオンライン申請が可能です。

 

税務署に開業届を提出する

開業届を作成したら、管轄の税務署へ開業届を提出します。提出方法は3種類です。

  • 管轄税務署へ持参
  • 管轄税務署へ郵送
  • e-Taxによる電子申請

持ちものは、提出方法により異なります。

持参 郵送 e-Tax
  • 開業届(提出用・控用)
  • 印鑑(訂正用に使用)
  • マイナンバーカード
  • (マイナンバーカードがない場合)通知カードなどマイナンバーを確認できる書類+顔写真付きの本人確認書類
  • 開業届(提出用・控用)
  • 返信用切手を貼り付けた返信用封筒
  • マイナンバーカードまたは通知カード
  • (マイナンバーカードがない場合)通知カードなどマイナンバーを確認できる書類+顔写真付きの本人確認書類
なし

e-Taxは、オンラインで完結する申請方法なので、持ちものはありません。ただし、利用開始にあたり、事前に利用者識別番号の登録が必要です。

郵送で提出する場合は、マイナンバーカードや本人確認書類のコピーを提出しなければなりません。提出には「本人確認書類(写)添付台紙」へ貼り付けて同封します。

参考:本人確認書類(写)添付台紙|国税庁

 

提出したあとは控えを保管しておく

開業届を管轄税務署へ持参した場合は、その場で確認され、収受日付印(受付印)を押した控えが渡されます。郵送で提出した場合の返却方法は、返信用封筒による郵送です。e-Taxを利用したオンライン申請の場合は、e-Taxのメッセージボックスへ受信通知が届きます。

どの提出方法においても、控えを保管しておかなければなりません。持参または郵送で提出した場合の控えには、管轄税務署の収受日付印が押されています。印付きの控えでなければ融資などの手続きができない恐れがあるため、注意しましょう。

e-Taxの場合は、控えがありません。受信通知と送信した開業届のデータを出力して保管しておきましょう。

 

開業届の書き方・必要事項

開業届の記載事項は、14項目です。項目により、空欄のままとする項目や、選択の必要な項目があります。事業の実態にあわせて明確に記載しましょう。ここでは、各項目の記載事項を解説します。

 

税務署名・提出日

税務署名とは、納税地を管轄する税務署名のことです。提出日は、開業届の提出日です。納税地が管轄する税務署がわからない場合は、国税庁のホームページにある税務署検索ページから管轄税務署を調べられます。

 

事業主情報

事業主情報の欄には、5項目の記載が必要です。

  • 納税地(住所地・居所地・事務所等から納税地を選択し、住所を記載)
  • 納税地以外の住所地・事業所等の住所
  • 事業主の氏名
  • 事業主の生年月日
  • 事業主のマイナンバー

納税地の欄にある住所地・居所地・事務所等の違いは以下の通りです。

住所地 居所地 事務所等
住民票の住所 一時的に住んでいる場所 事務所や店舗として事業を営む場所

住所地・居所地・事務所等から納税地を選択して住所を記載します。

 

職業および屋号

職業には、事業を営む職業名を記載します。たとえば、プログラマーや配達業など、具体的な職業名の記載が必要です。屋号とは、個人事業主が事業で使用する名前のことで、ない場合は記載しなくて構いません。

 

届出の区分

届出の区分では、「開業」を選択します。事業の引き継ぎを受けて開業する場合は、引き継ぎを受けた先の住所・氏名を記載します。事務所・事業所の区分は、新たに開業する場合は、「新設」です。

 

所得の種類

所得の種類は、3種類から選択します。それぞれの違いは以下の通りです。

不動産所得 所有する不動産を貸して得る所得
山林所得
  • 山林を伐採または立木のまま譲渡して生じる所得
  • 山林を取得してから5年経過した以降に山林所得となる
  • 林業経営者向けの区分
事業(農業)所得
  • 小売業・農業・漁業・サービス業などの事業による所得
  • 山林を取得して5年以内に山林を伐採または立木のまま譲渡した所得は事業所得に含む

開業・廃業等日

開業・廃業等日は、開業した日付を記載する項目です。開業した日に明確な定義はありません。開業の準備を含めて開業日とする場合や、実際の事業を始めた日を開業日とする場合があります。

 

事務所を新増設・転移・廃止した場合

本項目は、事務所等を新設・増設・移転・廃止した場合に、それぞれに該当する事務所等の住所を記載します。新規に開業するときは、記載不要です。

 

開業・廃業に伴う届出書の提出の有無

本項目は、開業届と一緒に提出する書類があるか否かを選択する項目です。所得税の「青色申告承認申請書」、消費税の「課税事業者選択届出書」を開業届と一緒に提出する場合は「有」を選択します。

 

事業の概要

事業の概要は、開業する事業の内容を簡潔かつ具体的に記載します。たとえば、飲食店の運営や美容業などです。事業の概要で記載した事業の概要は、確定申告書にある職業欄に同じ内容を記載します。

 

給与等の支払いの状況

給与等の支払いの状況は、従業員の人数と給与の決め方を記載します。各項目の意味は以下の通りです。

区分
  • 専従者は、青色事業専従者がいる場合
  • 使用人は、専従者以外の従業員がいる場合
従業員数 従業員の人数
給与の定め方 日給・月給など、給与の支払い方を記載
税額の有無
  • 従業員の給与から源泉徴収税を天引きするか否かを記載
  • 従業員給与の月額が8万8,000円以上の場合は「有」にチェックを入れる

従業員が1人もいない場合は、すべて空欄のままとします。

 

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の提出の有無

「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の提出の有無」は、2つの要件をどちらも満たした場合に「有」へチェックを入れます。要件は次のようなものです。

  • 雇用した従業員の給与から源泉徴収する
  • 開業届と一緒に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」をする

源泉所得税の納期の特例を受けない場合や、従業員を雇わない場合は「無」を選択します。

 

給与支払いを開始する年月日

「給与支払いを開始する年月日」は、従業員を雇用する場合、給与支払いを開始する年月日を記載する項目です。開業の時点で未定の場合や、従業員がいない場合は空欄のままとします。

 

関与税理士

関与税理士は、顧問税理士または開業届の作成を依頼した税理士の氏名・住所・連絡先を、税理士本人が記載する項目です。開業届を提出したあと、税務署からの連絡が税理士経由で来るようになります。

開業届を自身で作成した場合は、空欄のままとします。

 

開業届の提出方法

開業届は、開業から1か月以内に納税地を管轄する税務署に提出しなければなりません。ただし、開業から1か月後が閉庁日にあたる場合は、翌開庁日が締め切りです。

税務署が開庁していない場合は、時間外文書収受箱に投函しておけば、翌開庁日に回収して受け付けてもらえます。時間外文書収受箱へ投函した場合、受付日が翌開庁日になる恐れがあるため、注意が必要です。

 

納税地を管轄する税務署および地方自治体に提出する

開業届は、納税地を管轄する税務署に提出します。また、事業開始等申告書は都道府県税事務所に提出します。

納税地とは、開業時の事業所がある場所のことです。納税地を管轄する税務署がわからない場合は、国税庁のホームページにある税務署検索ページをご活用ください。

税務署の開庁時間は、以下の通りです。

  • 平日8:30~17:00
  • 閉庁日は、土・日・祝日および年末年始(12月29日~1月3日)

開庁時間以外は、時間外文書収受箱へ提出書類を投函することで、翌日以降に受付してもらえます。時間外文書収受箱を利用した提出の場合は、郵送と同じ持ちものが必要です。時間外文書収受箱を利用した場合、受付日が回収前日または回収日になる恐れがあります。

締め切り日直前に時間外文書収受箱へ提出する場合は、注意が必要です。提出方法に持参または郵送を選択した場合は「所得税の青色申告承認申請書」など、開業届と一緒に提出する書類をあわせて提出しても問題ありません。

参考:税務署の所在地などを知りたい方|国税庁

 

開業届の提出期限

開業届は、開業した日から1か月以内に提出するルールです。もし、開業した日が税務署の閉庁日にあたる場合は、翌開庁日が提出期限です。もっとも、提出期限が過ぎた場合のペナルティはないため、締め切りに間に合わなかった場合も、問題なく受け付けてもらえます。

ただし、3月15日までに手続きを完了しなければ、同年度の青色申告ができなくなり、青色申告所得控除が受けられなくなります。そのため、開業したら早めに届け出たほうがよいでしょう。

開業届の受付日は、提出方法により異なります。

  • 持参:窓口で受理された日
  • 郵送:郵便局が押印する通信日付印(消印)の日
  • e-Taxによるオンライン申請:メッセージボックスへ受信通知にある受付日時

青色申告による確定申告を希望する場合は、提出日にも注意が必要です。

事業開始等申告書の提出期限は条例によって定められているため、自治体によって異なります。東京都の場合は開業日から15日以内、神奈川県では2か月以内となっています。

参考:事業を始めたとき・廃止したとき|東京都

【e-kanagawa電子申請】申請書ダウンロード|e-KANAGAWA

 

開業届とあわせて提出すべき書類

開業届を提出しても、青色申告による確定申告書は受理されません。要件によって、開業届とあわせて提出すべき書類があります。主に5種類です。

  • 青色申告承認申請書
  • 青色専業者給与に関する届出書
  • 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
  • 所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書
  • 所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書

ここでは、書類の提出要件や提出期限などについて解説します。

 

青色申告承認申請書

青色申告承認申請書は、確定申告で青色申告の承認を受けたい場合に提出する書類です。開業年度から青色申告をしたい場合は、青色申告書による申告をしようとする年の3月15日までに提出しなければなりません。なお、その年の1月16日以後、新たに事業を開始した場合には、その事業開始日から2ヵ月以内に提出する必要があります。開業届と一緒に提出するのが一般的です。提出期限が閉庁日の場合、翌開庁日が提出期限です。

青色申告を希望する場合は、記帳や帳票を保管する準備をしなければなりません。青色申告承認申請書の提出が期限の直前になると、不備があった場合にその年の確定申告が受けられなくなる恐れがあります。開業届と一緒に提出することをおすすめします。

参考:所得税の青色申告承認申請手続|国税庁

 

青色専業者給与に関する届出書

青色専業者給与に関する届出書は、事業を手伝う配偶者や親族などに給与を支払いたい場合に提出する書類です。家族への給与が必要経費になる代わりに、所得税の配偶者控除と扶養控除の対象ではなくなります。

青色専業者給与を支払う場合は、届出書へ氏名や給与の金額を記載する必要があります。青色専従者や支払金額に変更が出たら、そのたびに青色専業者給与に関する届出書を提出しなければなりません。

提出期限は、青色事業専従者給与額を算入しようとする年の3月15日までです。ただし、確定申告をする年の1月16日以降に開業または専従者がいることとなった場合は、その事業年度開始の日から2か月以内に提出しなければなりません。

参考:青色事業専従者給与に関する届出手続|国税庁

 

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書とは、従業員を雇用することとなった場合に、源泉所得税の納期を変更する申請書です。

通常、源泉所得税は給与を支払った翌月10日までに前月分の源泉所得税をまとめて納付します。納期の特例が承認されれば、源泉所得税を納付するのは7月と翌年1月の2回だけになります。

常時雇用する従業員が10人未満の場合のみの特例です。提出期限はとくにありません。申請書を提出した日の翌月に支払う給与から適用されます。

申請するときは、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書へ必要事項を記載し、納税地が管轄する税務署へ提出します。

参考:源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請|国税庁

 

所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書

本届出書は、棚卸資産の償却方法を届け出るための書類です。開業時だけでなく、すでに取得している減価償却資産と異なる種類の減価償却資産を取得したときや、新たに開設した事業所で従来と異なる償却方法を選択する場合にも提出します。

償却方法を届け出ることで、償却資産ごとに節税効果が高い償却方法を選択できるのがメリットです。提出期限は、届出が必要となった年の確定申告期限です。申請するときは、届出書へ必要事項を記入し、納税地が管轄する税務署へ提出します。

参考:所得税の減価償却資産の償却方法の届出手続|国税庁

 

所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書

本届出書は、納税地を変更する場合に届け出る書類です。納税地の変更には、4つのパターンがあります。

  • 転居等により納税地を異動したい場合
  • 別の場所に事業所を設けているが、居住地を納税地としたい場合
  • 居住地を納税地としていたが、別の場所にある事業所を納税地にしたい場合
  • 新たに事業所を設け、新事業所を納税地にしたい場合

提出期限に定めはなく、添付書類も不要です。届出書を提出した日から納税地が変更されます。

参考:所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する手続|国税庁

 

開業届に関するよくある質問

開業届は、個人で事業を始めるにあたり提出する書類です。開業届の提出にあたっては、迷うことも多いでしょう。そこで、よくある質問を以下にまとめました。

開業届は出さなくてはいけないのですか?
必要です。青色申告で最大65万円の控除を受けたい場合は、提出が必要です。開業届は、開業から1か月以内に納税地が管轄する税務署へ提出します。
提出期限が定められているものの、開業日の定義は不明確で、提出期限に間に合わない場合のペナルティもありません。提出期限に間に合わなかった場合は、気が付いたときに提出しておきましょう。
開業届を提出するメリットを教えてください
開業届を提出すると、4つのメリットが受けられます。

  • 青色申告制度を利用できる
  • 屋号を名義とした銀行口座を開設できる
  • オフィス契約や融資の審査に使える
  • 職業を証明するのに役立つ

開業届を提出するメリットは、青色申告制度を利用できる点です。青色申告制度は、白色申告に比べて経費にできる範囲が広く、さまざまな控除が受けられます。

青色申告制度を適用したい場合は、開業届に加えて「所得税の青色申告承認申請書」も提出しましょう。

開業について悩むことがあったら税理士に相談しよう

開業届は、新たに事業を起こし、確定申告により税金を納める旨を届け出るための書類です。新たに開業するのであれば、必要な手続きや申請書の記載をミスなく済ませたいものです。

しかし事業の内容や状況により、開業届の提出に加えて多くの手続きが必要なため、手続きに不安を覚える人も多いのではないでしょうか。そこで開業届について悩むことがあったら、開業支援の経験が豊富な税理士へ相談するのがおすすめです。

サン共同税理士法人は、起業支援の経験豊富な税理士が多数在席しています。開業に必要な手続きのサポートに加え、正しい節税対策や助成金申請など、事業開始後も運営状況にあわせて必要なアドバイスを提供させていただきます。

まとめ

開業届の提出方法について解説しました。開業届は、新たに事業を開始し、所得税と消費税を確定申告で納めることを宣言する大切な書類です。届け出るときは、開業届へ必要事項を記入し、納税地を管轄する税務署へ開業した日から1か月以内に提出します。

開業の準備期間は、各種届出書類の準備から本業の開業準備まで、多くのタスクをこなす時期です。新たに事業を始めるのであれば、漏れやミスがなく開業届を提出したいと思うでしょう。この記事を参考に、漏れやミスがなくスムーズに開業書類が準備できるように備えておきましょう。

サン共同税理士法人では、初回無料相談を実施中です。ぜひ一度お気軽にご相談ください。

近藤 昴
このコラムを監修した税理士
近藤 昴サン共同税理士法人・横浜オフィス所長
東京地方税理士会 税理士登録:2013年 税理士登録番号:123285
2008年5月よりデロイト トーマツ税理士法人GES部門に勤務し、海外拠点を多く持つ日本・海外企業に対する国際人事異動に関するアドバイザリー業務などに従事。
2011年11月、ビジネスタックスサービス部門に異動し、約9年間勤務。マネジャーとして国内上場企業や外資系企業の税務コンサルティング業務及び税務コンプライアンス業務、税務顧問及び業務効率化提案などを行ってきた。
2020年12月、約12年間マネジャーとして勤務したデロイト トーマツ税理士法人を退職。
2021年1月にサン共同税理士法人に参画し、同月、横浜オフィス所長に就任。
>>プロフィールの詳細はこちら
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