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会社設立までの道のり
会社を設立するには、定款の作成、株主の確定後、会社の機関を設計していきます。そして最後に設立の登記をすることで成立します。会社の設立に登記は必須であり、それまでの手続きの締めくくりとなります。
会社設立の第一段階である定款の作成では会社の様々な規則を定めていきます。
登記をするにも添付書面として必ず用意しなくてはならないものです。しかし定款は公証人の認証によって効力を生じるため、認証を受けた定款を添付書類として用意します。
定款で必須の記載事項には「目的」「商号」「本店の所在地」など、登記に記載する内容と被っているものもあり、定款と登記とで内容に差異が生じないようにしましょう。
また定款に認証制度があるように、登記にも不備があれば登記官による却下が起こり得ます。ただしこの不備が補正できる場合には、登記官が定めた期間内に補正することで却下を避けることができます。
登記の効果
登記は会社と取引をする第三者に会社情報を公示するという目的のもと定められた制度です。
取引を安全に行うために重要な事項を知らせているのであり、逆に、登記をしていればこれをもって第三者に主張することができます。
つまり何か問題が生じたとき、第三者が登記をしている内容について知らなかったということを言い訳にできないという意味になります。しかし第三者に正当な事由がある場合や、登記の内容が間違っている場合には対抗できません。
会社設立時の登記事項
登記事項は株式や機関設計によって変わってきます。主な内容としては以下のようなものがあります。
1.商号
「商号」は会社名となり、最初か最後に株式会社という文字は入れなければならないなど、ルールがあります。認められない文字などもありますので難しい文字を使用される場合は事前に確認をしておくとよいかと思います。
2.本店及び支店の所在場所
「本店及び支店の所在場所」については定款に定める「本店の所在地」とは異なっていてもかまいません。定款に記載する所在地では〇〇市などといった行政区画まででも有効だからです。これに対して登記事項である所在地とは、番地など、最後まで記載しなくてはなりません。
パターンとしては大きく分けて3パターンあると思います。
➀自宅(持家)
➁賃貸・テナント
➂レンタルオフィス・バーチャルオフィス
➀自宅(持ち家)
自宅(持ち家)の場合で事務所家賃を経費とすると所有者側に不動産収入が発生するという論点があるので一般的には持ち家の場合は法人側で経費にしないケースが多いです。自宅開業の場合は、郵送物が自宅に届くという点と賃貸の場合は大家さんが自宅開業を認めていないことがあり退去させられてしまう可能性があるのでその点を注意してください。
➁賃貸・テナント
店舗型ビジネスなどで実際の店舗・オフィスがある場合はこちらを本店とした方がよいかと思います。もし店舗・オフィスがすぐに移転する場合は再度本店移転登記をしないといけない点に注意してください。
➂レンタルオフィス・バーチャルオフィス
もしご自宅開業が難しく店舗・オフィスもない場合は、一般的にはレンタルオフィス・バーチャルオフィス・ご実家などとする方法があります。レンタルオフィス・バーチャルオフィスを本店とし登記される方は数多くおりますし、人気エリアを選定すれば営業上のメリットなどもあると思います。
レンタルオフィス・バーチャルオフィスの注意点としては、創業融資や銀行口座開設に影響があることがあります。創業融資を受ける場合、日本政策金融公庫は本店がレンタルオフィス・バーチャルオフィスで問題はないのですが、信用金庫などからの創業融資がほぼ認められません。
日本政策金融公庫だけではなく、保証協会付きの制度融資を検討される場合にはレンタルオフィス・バーチャルオフィスは避ける必要があります。
銀行口座開設も信用金庫系は開設ができないケースがほとんどです。
3.公告する方法
株式会社は決算公告をする義務があります。原則は官報ですので官報でよいかと思います。
4.会社設立の年月日
法人の設立年月日は人間でいう誕生日です。設立年月日は誕生日のように色々なシーンで日付を記載したりするので覚えやすい日とするのがお勧めです。大安とする方もいますが、誕生日、記念日などとする方もいます。
5.目的
「目的」は会社がどのような事業をしていくのか記載することになり、定款に記載していない内容は書かないようにしましょう。事業に関連する経費と説明する関係上、経費に関する事業を記載することが実務的には多いです。
人材派遣、人材紹介、保険代理店などビジネスによっては目的に記載がないと資格が取得できないケースがあるので今後取得するライセンス関連を整理しておく必要があります。
また、創業融資を受ける場合、目的が少なすぎたり多すぎたりすると審査が通りにくくなると言われておりますので注意が必要です。
6.発行可能株式数
公開会社は、設立時発行株式数の4倍までが上限となりますが通常は非公開会社ですので影響はありません。一般的な目安としては設立時発行株式数の4倍か資本金1,000万円分です。
7.資本金の額
資本金は出資された財産のことであり、会社の信頼度を表す指標でもあります。資本金は色々と論点がありますが、一般的なポイントは下記となります。
➀創業融資の自己資金
創業融資では資本金は自己資金扱いとなりますので、創業融資を検討される場合には資本金を多くしてく必要があります。創業融資に関する自己資金の目安としては事業に必要な金額の1/3以上が自己資金、残りを創業融資として申請しますので、できれば資本金としては借入希望額の半額は欲しいです。
➁消費税の課税事業者判定
期首資本金が1千万円以上となりますと1期目から消費税の課税事業者(原則消費税を納めないといけない会社)となりますので、設立時の資本金は1千万円未満をお勧めします。
なお、期首資本金が1千万円ですので、設立日の翌日に増資して資本金1千万以上であればこの特例規定を回避することができます。また資本金基準ですので、払い込み資本の半額までを資本準備金とすることでも回避することができます。
また、資本金1千万以上の課税事業者の特例は基準期間(その期の2年前の期間)がない場合の特例ですので、原則的には3期目は適用がなく1期目と2期目だけの特例判定となる点がよく間違いやすいところになります。
➂住民税の均等割
期末の資本金等の額が1千万円超となると、一般的に年間7万円の均等割が年間18万となる点に注意が必要です。
こちらは消費税と違い、期末時点の判定となり、また、資本準備金を含む金額となります。
なお、資本金1億円超過となると法人税上で中小企業者等や中小法人等となるかどうかの判定、事業税上は外形標準課税の適用対象会社となるか、などといった論点があります。
8.役員(代表取締役の氏名及び住所)
代表取締役は自宅住所が登記事項となってしまうという点に注意が必要です。女性の方やご家族がいる方で自宅を公開したくない方は別の住所を本店とする方もいます。通常の取締役(役員)は住所の記載はありません。
なお、2024年10月1日以降の会社設立登記においては、一定の要件の下、株式会社の代表取締役の住所の一部を表示しない措置が設けられました。
代表取締役等住所非表示措置が講じられた場合には、登記事項証明書等によって会社代表者の住所を証明することができないこととなるため、金融機関から融資を受
けるに当たって不都合が生じたりするなど、一定の影響が生じることが想定されます。
そのため、代表取締役等住所非表示措置の申出をする前に、このような影響があり得ることについて、慎重かつ十分な検討をする必要があります。
9.その他
必要に応じて株券発行会社であること、取締役会設置会社であること等の旨を記載することになります。株券は原則発行しないものとされていますが、発行をするのであれば定款および登記に記載する必要があります。
その他発行済株式の総数やその種類、役員等の責任の免除についても定款の定めをしていれば記載します。
また、登記に際して添付書類が必要になってきます。すでに説明した定款は添付書類として必須です。
他に、現物出資がある場合に「資本金の額が会社法及び会社計算規則に従って計上されたことを証する書面」を添付するなど、内容に合わせて用意するものが変わってきます。
登記事項につき、証拠が求められるような内容についてはその証明書類が必要になるというように考えておきましょう。
登記内容はのちに変更することも可能ですが、費用がかかることも忘れてはいけません。
商号や目的、発行可能株式総数の変更などにかかる登録免許税は3万円です。
これらをまとめて変更すれば3万円で済みますが、別々の時期に変更を繰り返しているとそのたびに3万円がかかってしまい費用がかさんでしまいます。
なお、決算月は定款に記載しますが、登記事項ではないので、定款の議事録で変更することができます。
まとめ
登記事項はほとんど定款に記載されてあるものです。
そのため定款を作成した段階で登記事項について新たに考える必要はあまりないとも言えます。
しかし定款に記載した内容と差異がないようにすることや、定款の定めによって効力を発揮するものでかつ登記事項とされている内容について、記載漏れがないように注意しましょう。