2022年8月現在においても、まだまだ新型コロナウイルスの新規感染者数が発生しており、終息とは言えない状況が続いております。
新型コロナウイルス感染防止の観点から、人と人との接触行動が制限されるなか、実地調査を前提とする税務調査にも影響が生じており、2020年は過去最低の税務調査件数となりました。
ただし、周りの声を聞いている限りでは、2022年においては、徐々に税務調査が増えており、コロナ前の水準に戻ってきている傾向にあると感じています。
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目次
税務調査の実地調査件数が67%減少
国税庁が2021年11月に公表した法人税などの税務調査実績によると、2020事務年度の実地調査件数は約25,000件でした。これは2019事務年度の実地調査件数から約67%減少し、過去最低の調査件数となっております。
税務当局による税務調査は、これまで実地調査を前提とする手続きが行われてきましたが、コロナ状況下では新型コロナウイルス感染防止の観点から税務調査官が会社に訪問する従来の調査手法の実施が大きく制限され、調査件数が激減したと考えられます。
一方、税務署において書面や電話による連絡や来署依頼による面接により、納税者に対して自発的な申告内容の見直しなどを要請する「簡易な接触」により、自発的な申告内容等の見直し要請が約68,000件実施されました。
量より質にシフトした調査を実施
2020年事務年度においては、あらゆる資料情報と提出された申告書等の分析・検討を行った結果、大口・悪質な不正計算等が想定される法人など、調査必要度の高い法人について実地調査が実施されました。
その結果、申告漏れ所得金額は5,286億円、追徴税額は1,936億円、調査1件当たりの追徴税額は7,806千円となっています。
2019年事務年度の調査1件当たりの追徴税額は3,135千円なので、2020年実績は前年比で249.0%と大幅に増加しております。税務調査が大口・悪質案件をターゲットとしており、量より質にシフトした調査が実施されたといえます。
コロナ状況下での税務調査の実施
コロナ状況下では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、業務運営に当たっても3密回避による感染防止策を講じたうえでの税務調査が実施されています。
なお、税務調査官が会社訪問を行う場合には、通常は会社会議室などで資料を確認し、納税者へ質問を行うことで税務調査を実施しており、これはコロナ前の税務調査手法と大きく異なる点はない印象です。
国税庁が発表している調査・徴収事務における感染防止策
税務行政のデジタル・トランスフォーメーション
これまでは、税務調査での資料提出は手渡し・郵送による提出しか認められておりませんでしたが、2022年1月以降は税務調査等で提出を求められた資料はe-taxにより提出をすることができます。
e-taxによる資料提出は事前申請は必要なく、電子申告に対応していれば手続き可能ですが、実務の現場ではあまり運用されておらず、依然として手渡し・郵送による提出が原則となっています。
そこで、国税庁は「税務行政の将来像」(平成29年6月公表)を改定し、「デジタルを活用した、国税に関する手続や業務の在り方の抜本的な見直し」(税務行政のデジタル・トランスフォーメーション)に取り組んでいく方針を明確にしました。コロナによる非対面・非接触による業務運営が求められるなか、税務行政のデジタル・トランスフォーメーションはますます加速すると予想されます。
国税庁はデジタル技術を活用して、「申告内容の自動チェック」、「AI・データ分析の活用」、「照会等のオンライン化」、「Web会議システム等の活用(リモート調査)」などのデジタル・トランスフォーメーションを進めていく方針を発表しており、一部はすでに運用が開始しております。
参考:不正発見割合の高い10業種(法人税)
国税庁から「不正発見割合の高い10業種」が発表されております。
例年通り、水商売、現金商売が上位にランクインしています。これらの業種は現金売上の不正が起こりやすかったり、正確な経理ができていなかったりする傾向にあるので、税務調査では特に警戒される業種といえます。
2008年5月よりデロイト トーマツ税理士法人GES部門に勤務し、海外拠点を多く持つ日本・海外企業に対する国際人事異動に関するアドバイザリー業務などに従事。
2011年11月、ビジネスタックスサービス部門に異動し、約9年間勤務。マネジャーとして国内上場企業や外資系企業の税務コンサルティング業務及び税務コンプライアンス業務、税務顧問及び業務効率化提案などを行ってきた。
2020年12月、約12年間マネジャーとして勤務したデロイト トーマツ税理士法人を退職。
2021年1月にサン共同税理士法人に参画し、同月、横浜オフィス所長に就任。