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雑所得で計上できる経費は?個人事業主向けに分かりやすく解説

雑所得で計上できる経費は?個人事業主向けに分かりやすく解説

「副業の収入を雑所得で確定申告したい」

「雑所得で計上できる経費は?」

会社員の副業収入を雑所得で確定申告したいけれど、雑所得に分類する基準がよく分からない方も多いでしょう。

本記事では、そんな会社員の方に向けて、雑所得についての基本的な知識を分かりやすく解説します。確定申告の手続きや節税方法についてもご紹介するので、ぜひ参考にしてください。

また、確定申告や会計処理でお困りなら、サン共同税理士法人にご相談ください。サン共同税理士法人では月額顧問サービスを提供しております。メールやLINEなどから無料相談を受け付けているので、お気軽にお問い合わせください。

 

そもそも雑所得とは

雑所得とは10種類に分類される所得のうち、どの所得にも当てはまらない所得のことです。雑所得を理解するために、他の所得についても併せて確認しましょう。

所得の種類 概要
一時所得 営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない

(例)生命保険の満期返戻金、懸賞の賞金、競馬や競輪の払戻金

利子所得 預貯金や公社債の利子、合同運用信託、公社債投資信託、公募公社債等運用投資信託の収益の分配による所得
配当所得 株主や出資者が法人から受ける剰余金や利益の配当、剰余金の分配、基金利息、投資法人からの金銭の分配、投資信託、特定受益証券発行信託の収益の分配などによる所得
不動産所得 土地や建物などの不動産の貸付け、借地権など不動産の上に存する権利の設定や貸付け、船舶や航空機の貸付けによる所得
事業所得 農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業そのほかの事業を営んでいる人の事業による所得
給与所得 給料、賃金、賞与などの所得
退職所得 退職により勤務先から受ける退職手当などの所得
山林所得 5年以上所有している山林を伐採して譲渡または立木のままで譲渡することで生ずる所得
譲渡所得 土地、建物、株式、ゴルフ会員権、金地金などの資産を譲渡することによる所得
雑所得 利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得のいずれにも該当しない所得

参考:No.1300 所得の区分のあらまし|国税庁

 

雑所得と事業所得の違い

雑所得か事業所得かどうかは、営利性、有償性、反復性、継続して収入を得ているかなど一定の条件で判断されます。事業の売上げで生計を立てている場合は事業所得、副業として給与とは別に得ている収入は雑所得に該当するケースが多いでしょう。

例えば、会社員が休日にハンドメイドの物品を販売したり、クラウドソーシングで自作のイラストを販売したりして収入を得る場合を考えます。お小遣い稼ぎ程度の収入であれば「雑所得」、事業規模とみなされるときは「事業所得」と判断する可能性が高いです。

一概に会社員の副業=雑所得となるわけではないため個々に判断が必要です。事業所得に該当する場合は青色申告ができるという特徴もあります。

 

雑所得に分類されることが多い所得

雑所得に分類されることが多い所得

雑所得に分類されることが多い所得として、上記の3つが挙げられます。いずれも副業として人気がある仕事のため収入源にしている方も多いでしょう。詳しく解説していきます。

 

不用品売却での収入

フリマアプリやオークションへ不用品を出品して得た収入は、譲渡所得か雑所得に分類されます。どちらになるかの判断基準は、収入を得る目的で継続的に出品して利益を得ているかどうかです。

繰り返し出品する場合は、譲渡所得ではなく雑所得に分類されることになります。商品を安く仕入れて適正価格で販売する「せどり」などで継続出品をしているケースがこれに該当するでしょう。

しかし、服や靴などの自身の生活動産を売却して得る収入は、一般的に所得税が課税されない譲渡所得に分類されます。また、不用品売却の収入が事業所得とみなされる可能性もあります。例えば、事業規模で不用品売却をしているようなケースが該当します。

参考:No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法|国税庁

 

原稿料や講演料

本業が別にある会社員が副業としてライターやセミナー講師などで報酬を得る場合は基本的に雑所得です。医師業や士業の方が本業の延長線で講師や記事の監修などで報酬を得る場合も同様に雑所得になります。

一方でライターや作家、漫画家、セミナー講師を本業としている方が受け取った原稿料や講演料は、事業所得とみなされる場合が多いです。

 

ネット広告で得た収益

副業としてインスタやブログ運営で得たネット広告やアフィリエイト収入は雑所得に分類されることが多いでしょう。副業にかけた時間や得た収入の額から考えて、本業を超えない場合は、雑所得に分類されます。一方で広告収入が本業の収入を超えている場合や、本業と同等の時間を割いている場合は、事業所得とみなされる可能性もあります。

誰でも簡単にSNSで発信できる時代なので、ネット広告で報酬を得ている方が増えています。お小遣いとして気軽に受け取っている方も多いですが、報酬が一定額を超えたら確定申告をする必要があるため注意が必要です。

 

雑所得で計上できる経費

雑所得を得るために支出した費用は、受け取った収入から必要経費として差し引くことが可能です。必要経費に含められる費用には以下のようなものがあります。

  • 文房具の購入費
  • 電気・水道・ガス代
  • 家賃
  • 本やメールマガジンの購入費
  • 交通費
  • パソコンやスマホの利用料
  • 広告費用
  • 食事代・お歳暮の購入費用

それぞれの費用について具体的に確認していきましょう。

 

文房具の購入費

コピー用紙やボールペンなどの文房具を購入する費用は「消耗品費」または「事務用品費」として経費に含められます。文房具はどちらの費目に分類しても問題ありませんが、経費処理が煩雑になるため、どちらか一方に決めて処理するようにしましょう。

消耗品費に含められるのは耐用年数が1年未満、かつ取得価格が10万円未満の備品の購入費です。耐用年数が1年以上のものを経費に入れる場合は、減価償却が必要になるため注意してください。

 

電気・水道・ガス代

オフィスを借りて副業をしている場合に使用する電気・水道・ガス代は「水道光熱費」として経費に含めることが可能です。

自宅で副業をしている場合は、家事按分という特殊な処理で計算する必要があります。雑所得を得るために使用した金額とプライベートで使用した金額を分けて計上する方法です。例えば、1日のうち副業に使用した割合を計算します。家事按分の詳細は、後述の解説をご覧ください。

 

家賃

オフィスを借りて副業をしている場合は、その家賃を「地代家賃」として経費に含められます。コワーキングスペース利用料も経費計上可能です。

自宅で作業している場合は、電気・水道・ガス代と同様に家事按分をして経費計上する必要があります。自宅の一室を副業部屋と決めて使用しているような場合は、副業部屋の面積の割合だけを経費に計上するのが一般的です。

 

本やメールマガジンの購入費

業務を行う上で必要な知識を習得するために購入した書籍代や、有料メールマガジンの購入費用は「新聞図書費」として経費計上が可能です。

地図や路線価図の購入費用も経費に含められます。新聞や雑誌の定期購読は法人であれば問題なく含まれますが、個人の場合は業務に関係する部分のみなので注意が必要です。

また、業務に関係ある資格取得のための書籍購入費用も経費計上できます。ただし、医師や税理士、弁護士など独占業務を行える国家資格の取得費用は、経費に計上できません。

 

交通費

クライアントとの面談や取材先に出向く際の交通費、商品や材料を購入しに行く際の交通費は「旅費交通費」として計上できます。

私用で支出した交通費と分ける必要があるため、交通機関で外出する機会が多い方は専用のICカードを作る方法もおすすめです。業務のためにマイカーで移動する場合は、ガソリン代も経費に含められます。公共交通機関やマイカー、いずれを利用する場合も、プライベートと業務を分ける必要があるため必ず記録を付けてください。

 

パソコンやスマホの利用料

パソコンやタブレットの通信料、スマホの通話料や通信料は「通信費」として計上できます。パソコンやタブレットを副業にしか使用しない場合や、副業用のスマホを用意している場合は全額通信費として計上できます。

プライベートにも使用する場合は家事按分が必要なため、業務に使用した時間の割合分だけ経費に計上するのが一般的です。スクリーンタイムや通話時間をこまめに記録しておくようにしましょう。

 

広告費用

業務を宣伝するためのチラシや看板製作費用、インターネットに広告を配信するための費用は「広告宣伝費」として計上します。顧客に配布する目的で屋号を印字したボールペンやカレンダーなどの宣伝グッズを作成する費用は、消耗品費ではなく広告宣伝費に含めます。

広告宣伝費として計上できるのは10万円未満のものです。取得価格が10万円を超える場合は固定資産として計上する必要があるため、看板などの大物を購入する場合はご注意ください。

 

食事代・お歳暮の購入費用

取引先との食事代やお中元、お歳暮などの購入費用は「接待交際費」に含められます。取引先に渡すお菓子や手土産代、結婚祝や慶弔見舞金なども接待交際費で計上可能です。

取引先とではない、個人的な食事会の費用などは接待交際費に含められません。業務を宣伝するためのチラシやカレンダーなどの販売促進グッズも接待交際費には含めません。

 

雑所得を経費計上する際の注意点

雑所得を経費計上する際の注意点

雑所得を経費計上する場合は以上の4点の注意点があります。 確定申告をする予定がある方は事前に確認しておいてください。

 

プライベートでも使うものは家事按分する

業務だけでなくプライベートでも使う場合は「家事按分」という処理が必要です。具体的には業務とプライベートで兼用している支出のうち、業務で使用する部分の割合を計算して経費計上します。例えば自宅の書斎を業務専用で使用している場合は、以下の通り算出できます。

「書斎の面積(平方メートル)」÷「家全体の床面積(平方メートル)」×100=経費計上割合(%)

持ち家の場合は、固定資産税や火災保険料なども按分可能です。しかし業務で使用している面積が大きい場合は、住宅ローン控除額が減額される可能性があるため、注意が必要です。

 

領収書など取引関係書類は保存しておく

青色申告者は7年間、白色申告者は5年間、取引関係書類を保存するよう義務付けられています。なお、青色申告の場合、前々年の所得が300万円以下である場合のみ、保管義務のある期間は5年間です。

令和4年の改正までは雑所得の領収書や請求書の保管義務はありませんでした。確定申告の際に領収書を添付する必要はありませんが、必ず保管しておくようにしましょう。

参考:国税庁-個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について

 

領収書なしの場合は出金伝票を作成する

領収書がない場合は、出金伝票に記入すれば領収書の代わりになります。出金伝票とは現金を支払った場合に記入する書類で、文房具の購入や飲食店で接待交際費を支払った場合など業務にかかる支出が対象です。

電車やバスなどの公共交通機関を利用した際の交通費、取引先と割り勘で支払った飲食代などは領収書がもらえません。また、ご祝儀や慶弔見舞金も領収書が出ないため出金伝票に記入します。

出金伝票には以下の情報を記載してください。

  • 日付
  • 出金先
  • 勘定科目
  • 摘要
  • 金額

支出の内容を証明する大切な書類なので、漏れなく記入するようにしましょう。

 

所得額が20万円を超えたら確定申告が必要

会社員など本業から給与所得がある方は、そのほかの所得額が20万円を超えた場合に確定申告が必要となります。所得額とは収入額から必要経費を差し引いた金額です。例えば、副業収入が22万円、必要経費が3万円の場合の所得額は19万円なので確定申告は不要です。

給与所得は年末調整で課税されますが、副業収入は申告をしないと課税されないため所得額が20万円を超える場合は、確定申告しなくてはなりません。申告すべき所得があるにもかかわらず故意に申告をしなかった場合、無申告加算税や延滞税などが課される恐れがあります。

 

雑所得の経費に関するよくある質問

雑所得の経費に関する質問で多く寄せられるのは以下3つです。

  • 雑所得の経費はいくらまで計上できる?
  • 確定申告書の書き方が分からないときはどうする?
  • 必要経費は収入の3割が上限って本当?

確定申告の書き方が分からない方はぜひ参考にしてください。

雑所得の経費はいくらまで計上できる?
雑所得を得るために業務上必要な支出であれば、雑所得の経費に上限はありません。かかった実額を収入から差し引いて確定申告すれば、課税金額を少しでも抑えることができます。

ただし、収入から必要経費を引いたらマイナスになってしまった場合は要注意です。副業を始めたばかりだと、稼いだ報酬より初期投資が上回ってしまうケースもあります。

そのような場合でも、雑所得に関しては経費を差し引いて赤字にしたり、他の所得で得た利益と相殺する処理(損益通算)したりはできません。雑所得ではなく事業所得であれば損益通算が可能です。

確定申告書の書き方が分からないときはどうする?
確定申告書の書き方が分からないときは、以下3つのステップで解決しましょう。

  • 国税局のホームページを見る
  • 税務署の申告相談会に参加する
  • 税理士に相談する

国税庁ホームページには「確定申告書等作成コーナー」が開設されています。画面の案内に沿って金額などを入力すれば簡単に申告書が作成可能です。不明点がある場合は「タックスアンサー(よくある質問)」や、チャットボットも活用できます。

また確定申告時期になると税務署内で申告相談会が開催されるため、個別に確認したいことがある場合は参加するのもおすすめです。税務署の相談会は平日に開催されることが多く毎年混雑するため、忙しくて時間の都合がつかない方は税理士に相談しましょう。

参考:申告相談|国税庁

必要経費は収入の3割が上限って本当?
インターネットで雑所得の必要経費について調べると「収入の3割が上限」という情報にたどり着くことがあります。

現在までに法律で必要経費の上限や下限が定められたことはないので、この情報は誤りです。領収書や請求書などの証ひょう書類を正しく保管、記録していれば、かかった経費の実額を収入額から差し引きできます。

 

確定申告で困ったらサン共同税理士法人にご相談を

ふるさと納税や副業が普及しつつあり、個人でも確定申告をする方が増えてきました。国税庁のホームページや税務署でもやり方を調べることができますが、不慣れな方には理解が難しい部分もあります。確定申告で困っている方は、税理士にご相談ください

税務署に相談することと税理士に相談することの大きな違いは、節税対策を相談できるかどうか。税務署は「正しい税金の納付をサポート」するだけで、節税のアドバイスはしてくれません。確定申告のやり方だけでなく、適切な節税サポートも受けたい方は、ぜひサン共同税理士法人にご相談ください。

近藤 昴
このコラムを監修した税理士
近藤 昴サン共同税理士法人・横浜オフィス所長
東京地方税理士会 税理士登録:2013年 税理士登録番号:123285
2008年5月よりデロイト トーマツ税理士法人GES部門に勤務し、海外拠点を多く持つ日本・海外企業に対する国際人事異動に関するアドバイザリー業務などに従事。
2011年11月、ビジネスタックスサービス部門に異動し、約9年間勤務。マネジャーとして国内上場企業や外資系企業の税務コンサルティング業務及び税務コンプライアンス業務、税務顧問及び業務効率化提案などを行ってきた。
2020年12月、約12年間マネジャーとして勤務したデロイト トーマツ税理士法人を退職。
2021年1月にサン共同税理士法人に参画し、同月、横浜オフィス所長に就任。
>>プロフィールの詳細はこちら
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