インボイス制度や登録事業者番号は、2023年10月以降、避けては通れないビジネス上のテーマとなっています。しかし名前を耳にする機会は増えてきているものの、具体的な内容や実際の調べ方について、詳しく知っている人は案外少ないのが現状です。
インボイス制度は、税制改革の一環として導入されたもので、登録事業者番号はその中心的な役割を果たしています。正確な取引のため、そしてビジネスの信頼性を保つためには、番号の確認は不可欠です。
本記事では、インボイス制度の登録事業者番号の調べ方について、具体的な方法から背景まで、幅広く解説します。
インボイス制度の登録事業者番号を調べる5つの方法
インボイス制度で必須な登録事業者番号を調べる方法としては、主に以下の5つが挙げられます。
- 登録通知書で確認する
- 適格請求書発行事業者公表サイトで確認する
- 法人番号公表サイトで確認する
- 取引先に直接質問する
- 外部サービスを利用する
それぞれ手間や確実性が異なるので、以下の解説を読んで自在に使い分けられるようにしておきましょう。
登録通知書で確認する
登録通知書による確認は、インボイス制度の登録事業者番号を知るためのもっとも基本的で確実な方法です。
事業者がインボイス制度に登録を完了すると、税務署から登録通知書が送付されます。登録通知書には、事業者ごとに割り当てられた独自の登録事業者番号が記載されており、これをもとに正確に番号を把握することが可能です。
公式の情報源から情報を得られる方法なので、誤りのリスクは極めて低いといえるでしょう。
ただし通知書を紛失してしまった場合や、何らかの事情でまだ受領していない場合、直接的なアクセスが難しい場合などは、ほかの手段を検討する必要があります。
適格請求書発行事業者公表サイトで確認する
インボイス制度における登録事業者番号の調査には、公的に提供されている適格請求書発行事業者公表サイトを活用する方法があります。
適格請求書発行事業者公表サイトは、登録事業者の情報を一般に公開するための公式プラットフォームです。事業者名や所在地などと共に、登録事業者番号が参照できるようになっています。
とくに、取引先の企業が適格請求書発行事業者であるかを確認したい場合や、自社の情報が適切に公表されているかをチェックしたい場合には、効果的に活用できるでしょう。
オンライン上で簡単にアクセスできるため、時間や場所を問わずに情報の確認が可能であり、多くの事業者にとって便利なツールとなっています。
法人番号公表サイトで確認する
前項で紹介した適格請求書発行事業者公表サイトは、原則としてあらかじめ登録事業者番号がわかっている場合にしか活用できません。わからない場合には、まず法人番号公表サイトから法人番号を探してみましょう。
参考:国税庁法人番号公表サイト
日本には法人番号制度が存在し、すべての法人に固有の番号が付与されています。法人番号は公的な取引や手続きの際に使用されることが多いため、法人番号公表サイトを通して、簡単に検索・確認が可能です。
法人番号公表サイトで法人番号を得ることで、適格請求書発行事業者登録サイトで検索をかけられるようになります。
法人番号公表サイトでは、事業者の商号や名称、都道府県および郵便番号で法人番号を検索できるため、調べたい法人の名前や住所がわかっていれば容易に情報にたどり着けるでしょう。
取引先に直接質問する
インボイス制度の登録事業者番号の確認方法として、もっともシンプルかつ直接的なアプローチは、取引先に直接質問することです。取引の関係が密でコミュニケーションを頻繁に行っている取引先や、情報紹介についてのフォーマルな手続きが不要な小規模事業者の場合に効果的なやり方といえるでしょう。
また、この方法の大きな利点として、個人事業主などの小規模事業体の登録情報も直接把握できることが挙げられます。公式の公表サイトなどでは、個人事業主の情報が掲載されていない場合もあるため、直接の照会が有効となるケースも少なくありません。
しかし注意点も存在します。取引先から提供される情報は、100%正確であるとは限りません。誤った情報を提供されるリスクや、取引先が最新の情報を持っていない可能性も考慮する必要があるでしょう。
重要な取引や契約に関連する場面などでは、ほかの方法と併用して情報の確認を行う、二重にチェックするなどの対応が推奨されます。
外部サービスを利用する
インボイス制度のスタートにともない、登録事業者番号の確認をサポートする外部サービスが増えています。一連のサービスは、特定のニーズに応じて柔軟に対応可能であるため、多くの事業者にとって非常に便利なものです。たとえば以下のような活用法が挙げられます。
- インボイスに記載された登録事業者番号をOCRで読み取る
- 取引先に直接確認する代行サービスを利用する
- 取引先マスタ情報などのファイルはアップロードして確認する
一つ一つ見ていきましょう。
インボイスに記載された登録事業者番号をOCRで読み取る
OCR(光学文字認識)の技術を利用して、インボイスに記載された登録事業者番号を自動で読み取るサービスが存在します。物理的な紙のインボイスや、デジタルデータであるPDF形式のインボイスから、登録事業者番号を高速に抽出可能です。
なかには、OCR機能を使って読み取ったデータを、自動的に国税庁のデータと照合して正確性を確認してくれるサービスを開発中のところもあります。
管理やデータ入力を人の手で行うと、時間がかかるうえにミスが発生するリスクも高まるでしょう。OCR技術を活用することで、大幅な作業効率アップが可能です。
ただし注意点として、専用のシステムを導入する必要があることや、そもそもインボイスを入手しなければ利用不可能であることなどが挙げられます。
取引先に直接確認する代行サービスを利用する
取引先に直接確認する代行サービスを利用するのも、有効な手段の一つとなります。
取引先からの情報収集作業は、多くの場合、時間と労力を要するタスクです。とくに大量の取引先が存在する事業者にとっては、一つ一つの確認作業が膨大な手間となり得ます。
そこで、一連の確認作業を代行してくれるサービスが増加中です。取引先に直接確認する代行サービスは、クライアントの代わりに取引先にコンタクトを取り、インボイス制度の登録事業者番号を確認する作業を行ってくれます。
新しいシステムを導入する必要がないことなどがメリットです。逆にデメリットとしては、結果が出てくるまでに時間がかかることや、代行業者による作業結果の信頼性を別途確認する必要があることなどが挙げられます。
取引先マスタ情報などのファイルをアップロードして確認する
取引先マスタ情報などのファイルをアップロードし、ファイル内の取引先登録状況を一括で管理できるインターネットサービスがあります。大量のデータを持つ企業や、継続的に情報を更新する必要がある事業者に、とくに向いているサービスです。
取引先の一覧や関連するファイルをアップロードするだけで、システムが自動で情報を解析し、登録事業者番号を確認してくれます。コードのアルゴリズムやデータベース技術を活用しており、短時間で大量のデータのなかから必要な情報を抽出可能です。
システムの導入が不要で、国税庁のデータと連携していて信頼性が高いことなどがメリットとして挙げられます。デメリットはとくにありませんが、強いていえば、サービスによってはそれなりの費用がかかることが挙げられるでしょう。
インボイス制度の登録事業者番号とは?
インボイス制度は、課税事業者が仕入税額控除を適用するにあたって、取引先から適格請求書(インボイス)を発行してもらうことを義務付ける新たな制度です。インボイスには記載義務のある項目がいくつかありますが、その一つとして登録事業者番号があります。
インボイス制度は誰でも利用できるわけではなく、国税庁に対し申請を行わなければいけません。申請をし審査に通ると、すべての事業者に固有の登録事業者番号が発行されます。インボイスにはこの番号の記載が必須なので、結果として登録しなければインボイスを発行できないことになる仕組みです。
登録事業者番号の役割は、要するにIDのようなものであると考えておけばよいでしょう。
登録事業者番号の役割
登録事業者番号の役割は、自身が売り手であるか買い手であるかによって多少異なります。ここではそれぞれの立場から、番号がどのように働くのかを見ていきましょう。
売り手にとっての登録事業者番号の役割
売り手、すなわち商品やサービスを提供する事業者にとって、登録事業者番号は取引の信頼性を高める重要な要素です。売り手は正規の適格請求書発行事業者であることを証明でき、課税事業者である取引先に安心感を与えられます。
インボイスを発行すると、取引の詳細な内容や消費税の額が明確になるため、税務上のトラブルを未然に防ぐことも期待できるでしょう。
またインボイスを発行できるということは、課税事業者なら取引先の仕入税額控除に協力できるということでもあります。これにより課税事業者である取引先から取引を受けられるリスクを低減できるでしょう。また新たな取引先を開拓するのも容易になります。
買い手にとっての登録事業者番号の役割
買い手、すなわち商品やサービスを受け取る事業者の視点から見ると、登録事業者番号は取引の透明性と安全性を保証するためのカギとなる情報です。商品やサービスを購入する際、番号を確認することで、取引相手がインボイス制度に適合しているか、正式な事業者であるかを容易に判断できます。
とくに、新しい取引先や未知の事業者との取引を始める際のリスクを低減する役に立つでしょう。
また、登録事業者番号が明記されたインボイスを発行してもらうことで、買い手は仕入税額控除の適用が可能となります。これにより大幅な節税が可能となり、事業を安定的に進められるようになるでしょう。
登録事業者番号を記載する箇所
インボイスに登録事業者番号を記載する際、具体的にどこに記載するかまでは指定されていません。しかし発行事業者名あるいは商号とあわせて記載することが求められています。
たとえば請求額の横に記載したければ、すぐ上に自社の名前も一緒に記載しておくべきでしょう。名前と登録番号がセットになっていることで、インボイスを受け取る側も確認作業としての検索がしやすくなります。
インボイス制度ついてお悩みならサン共同税理士法人へ
登録事業者番号の確認は、事業運営における重要なステップの一つといえるでしょう。しかし、インボイス制度については、登録事業者番号の確認以外にもやるべきことが沢山あります。
インボイス対応でお悩みなら、ぜひ弊社・サン共同税理士法人までお問い合わせください。
サン共同税理士法人には経験豊富なプロフェッショナルが多数在籍しています。インボイス制度だけでなく、さまざまな税務に関する複雑な問題もスムーズに解決へと導く腕利き揃いです。お客様のビジネスニーズや疑問に対して迅速かつ正確に対応する準備を常に整えており、個々の状況に応じた最適な解決策を提案いたします。
初回相談は無料ですので、ぜひお気軽にご利用ください。
登録事業者番号の調べ方に関するまとめ
インボイス制度の下での事業運営においては、登録事業者番号の確認を欠かすことができません。番号の確認や取得は、信頼性の担保や取引の透明性を高めるための重要なステップです。
本記事では、登録事業者番号を調べるための方法を解説するとともに、より基本的な知識についても詳細に見てきました。一連の内容をきちんと読み込んでおけば、登録事業者番号の扱いに関して悩んでしまうケースは激減するでしょう。
もし税務について困ったことがあったら、専門家に相談するのがおすすめです。弊社・サン共同税理士法人も、登録事業者番号の問題をはじめとするインボイス制度全般の相談に対し、全力でサポートいたします。
2008年5月よりデロイト トーマツ税理士法人GES部門に勤務し、海外拠点を多く持つ日本・海外企業に対する国際人事異動に関するアドバイザリー業務などに従事。
2011年11月、ビジネスタックスサービス部門に異動し、約9年間勤務。マネジャーとして国内上場企業や外資系企業の税務コンサルティング業務及び税務コンプライアンス業務、税務顧問及び業務効率化提案などを行ってきた。
2020年12月、約12年間マネジャーとして勤務したデロイト トーマツ税理士法人を退職。
2021年1月にサン共同税理士法人に参画し、同月、横浜オフィス所長に就任。