企業経営において、資金繰りは血流に例えられます。売上や利益といった「損益計算上の数字」がいかに良好であっても、現金の流れが滞れば事業は継続できません。
その資金繰り改善手段の一つとして、「融資の借換(リファイナンス)」があります。
借換は単なる金利引下げ、資金調達策ではなく、返済条件の再設計によってキャッシュフローを最適化する経営戦略の一つです。
1. 借換とは何か
「借換」とは、既存の融資を新たな融資で置き換え、金利や返済期間、保証条件などを見直す手法を指します。言
い換えれば、“借入の再構築” です。新たに融資を受け、その資金で既存の借入金を完済することにより、より良い
条件のもとで返済を継続できます。
2. 借換によるキャッシュフロー改善の仕組み
借換によって資金繰りが改善する最大の要因は、返済期間の延長による月次返済額の減少です。金利引下げによ
る効果よりも、返済期間を長期化することによるキャッシュフロー改善効果の方がはるかに大きい場合も少なくあ
りません。
【図表1】借換による月次返済負担の軽減イメージ
3. 借換が有効なケース
① コロナ融資の返済が本格化した企業
据置期間終了後の返済負担が急増しており、借入期間延長による月割賦金負担の低減が可能。
② 短期借入が多く、資金繰りが不安定な企業
短期資金を長期化することで資金繰りを安定化。
③ 借入が複数本あり、借入残期間が短い企業
複数本の借入を借換で一本にし、長期間の返済とすることで月割賦金負担の低減が可能。
4. 借換の留意点
総返済額が増加する可能性:返済期間を延ばすことで毎月の返済額は減りますが、結果的に支払利息の総額は増加する傾向にあります。
5. 借換は「延命策」ではなく「再設計」
借換というと、「返済が苦しい企業の延命措置」という誤解を持たれがちですが、実際は異なります。
むしろ、健全な企業が経営を持続的に成長させるための再設計手段です。短期的には手元資金の厚みを増し、中長期的には資金繰りの安定化によって新たな投資や採用へ踏み出す余力を生み出します。
6.まとめ
借換は、単なるコスト削減ではなく、企業の資金フローを再設計する「経営判断」です。
短期的には毎月の返済額の軽減によるキャッシュフロー改善を、中長期的には金融機関との信頼強化と成長資金の確保をもたらします。
重要なのは、「今、資金繰りが苦しいから借り換える」ではなく、「今後の事業成長を見据えて資金構造を整える」という発想で臨むことです。

