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仮払金と立替金の違いとは?具体的な費用や仕訳の例についても解説!

仮払金と立替金の違いとは?

「仮払金」と「立替金」はどちらも仕訳の際に用いる勘定科目です。

2つは混合しやすい勘定科目のため、違いを明確に理解できていない方も多いのではないでしょうか?

本記事では、仮払金と立替金の違いを解説します。具体的な仕訳の方法についても紹介するので、経理業務において違いを理解する必要がある方や簿記の勉強をしている方はぜひ参考にしてみてください。

 
※この記事は、弊社のコンテンツガイドラインに基づき作成されています。

立替金とは?

立替金は、取引先や従業員などの会社以外の方が本来負担すべき費用を会社が一時的に立て替えて支払った際に用いる勘定科目です。

一時的に立て替えているだけのため、将来的に立て替えた費用は回収します。

 

立替金の具体例

立替金を用いるのは、以下のような場面が想定されます。

  • 休職中の従業員が負担するべき社会保険料を会社が立て替えて支払った
  • 取引先が負担するべき配送料を自社で立て替えて支払った
  • 従業員の私的な費用を会社が立て替えて支払った

いずれも、本来は会社以外の方が負担すべき費用を会社が立て替えて支払っていることがポイントです。

 

立替金の仕訳の例

実際に費用の立て替え払いを行った際の仕訳を解説します。立て替えた費用を回収した際の仕訳も紹介するので、参考にしてみてください。

 

取引先が負担すべき配送料を現金で立て替えた

まずは、取引先が負担すべき配送料1,000円を現金で立て替えた場合の仕訳を見ていきましょう。

立替金が発生した際には、借方に立替金と記帳します。また、配送料を現金で支払ったので、貸方に現金と記帳しましょう。

借方 金額 貸方 金額
立替金 1,000 現金 1,000

立替金は一時的に発生した費用を回収する権利になるため資産として計上します。

立て替えた配送料1,000円を取引先から現金で回収した際の仕訳は以下の通りです。

借方 金額 貸方 金額
現金 1,000 立替金 1,000

立替金は一時的に費用を立て替えているだけのため、回収後には必ず貸方に記帳して相殺しましょう。

ただし、立て替えた取引先の倒産などを理由に立替金を回収できないこともあります。その場合には、以下のように貸倒損失を用いて仕訳します。

借方 金額 貸方 金額
貸倒損失 1,000 立替金 1,000

休職中の従業員の社会保険料を立て替え払いした

次に、従業員の社会保険料を立て替えた場合の仕訳を見ていきます。

療養などで休職している場合、会社が従業員の保険料を立替して納付することになります。

社会保険料は退職しない限りかかり続けるためです。仕訳は以下のように行います。

借方 金額 貸方 金額
未収入金 60,180 預り金(健康保険) 17,730
預り金(地方税) 15,000
預り金(厚生年金) 27,450
預り金(雇用保険) 0
所得税 0

雇用保険は、支払賃金に雇用保険料率をかけて計算するため、休職中は発生しません。

また、立替金を社員から回収した場合の仕訳は、以下の通りです。

借方 金額 貸方 金額
預金 60,180 未収入金 60,180

立替金は売上にならない

立替金で計上した費用を回収した際に、売上として計上することは基本的にありません。

取引先の負担すべき費用を立て替えた場合には、領収書の宛名は取引先の会社名にするなど、本来は取引先が負担すべき費用であることを証拠として残しておきましょう。

 

仮払金とは?

仮払金は、金額などの詳細が決定していない段階で費用を支払った際に、費用の詳細が確定するまでの間、一時的に計上する勘定科目です。

仮払金は、会社の事業活動のために必要な経費である点が立替金との違いになります。

従業員が個人負担で支払えない高額な支出が想定される場合は、従業員に対して事前にお金を渡しておき、仮払金として計上します。

 

仮払金の具体例

仮払金を用いるのは、以下のような場面が想定されます。

  • 取引先との会食の際、事前に一定の金銭を従業員へ渡した
  • 出張の際、事前に一定のお金を従業員へ出張費として渡した
  • 支払内容の詳細が不明な場合に一時的な仮勘定として使用する場合

いずれも、将来的に経費として計上されることが見込まれるが費用詳細が不明確なものを仮払いしていることがポイントです。

 

仮払金の仕訳の例

実際に経費の仮払いを行った際の仕訳を解説します。仮払いをした費用の費用詳細が確定した際の仕訳も紹介するので、参考にしてみてください。

 

従業員の旅費交通費を仮払いした

従業員が出張に行く際に、会社が旅費交通費5万円を現金で仮払いした場合の仕訳を見ていきましょう。

借方 金額 貸方 金額
仮払金 50,000 現金 50,000

仮払をした段階では費用の詳細は決まっていないため、旅費交通費ではなく仮払金で仕訳を行います。

また、仮払金はまだ費用として確定しておらず、支出したお金が戻ってくる可能性もあるので資産として計上します。

従業員が旅費交通費として3万円を使用し、未使用分2万円が戻された際の仕訳は以下の通りです。使用した分の仮払金を旅費交通費で相殺します。

借方 金額 貸方 金額
旅費交通費 30,000 仮払金 50,000
現金 20,000

また、従業員から旅費交通費5万円に加え接待交際費1万円を現金で使用した報告があり、従業員に1万円を追加で現金で支払った際の仕訳は以下の通りです。

借方 金額 貸方 金額
旅費交通費 50,000 仮払金 50,000
接待交際費 10,000 現金 10,000

仮払金は一時的に計上する勘定科目なので、必ず貸方に記帳して相殺する必要があることを覚えておきましょう。

 

仮払金と立替金の共通点

仮払金と立替金は混合されやすい勘定科目です。それぞれ違いがありますが、共通している点もあります。仮払金と立替金の共通点を解説します。

 

会社が一時的に支払うお金である

仮払金も立替金も、いずれも会社が一時的にお金を支払っている点が共通しています。

そのため、仮払金も立替金も最終的には相殺の仕訳が必要です。立替金が回収不能となった際には必ず貸倒損失として計上し、貸借対照表に立替金が残り続けないようにしましょう。

 

「資産」に計上する

仮払金と立替金は、いずれも貸借対照表の流動資産に分類されます。

立替金は立て替えたお金を受け取る権利であり、仮払金も費用が発生しなかった際にはお金が戻ってくる可能性があるためです。

仮払金と立替金はいずれも「一時的に」支払っているお金のため、固定資産ではなく流動資産に分類します。

 

仮払金と立替金の違い

仮払金と立替金は混合しがちですが、明確に異なっている点があります。

違いを理解して、確実な仕訳処理ができるようになりましょう。

 

仮払金は経費で、立替金は経費ではない

仮払金は、旅費交通費や接待交際費などの会社の経費になることが見込まれる費用を仮払いしたときに用いる勘定科目です。

一方で、立替金は会社が負担すべきでない従業員の私的な費用や取引先が負担すべき配送料などを負担したときに用います。

この「経費になるかどうか」が仮払金と立替金の大きな違いです。

仕訳に迷った際には、経費として考えられるかを軸に検討してみてください。

 

仮払金は金額が未確定、立替金は金額が確定

もう一つの仮払金と立替金の違いは、「金額が確定しているかどうか」です。

仮払金は費用が確定する前に支払いますが、立替金は費用が確定した後に支払います。

 

仮払金の仕訳の際の注意点

仮払金は従業員の費用負担を軽減してトラブルの発生を避けられる便利な制度ですが、仕訳の際には注意が必要です。

仮払金の仕訳の際の注意点を解説します。

 

早く処理する

仮払金はできるだけ迅速な処理が必要です。特に従業員に仮払金を渡してから時間が経つと、従業員が仮払金をいつ何のために用いたのかが把握しづらくなります。

「出張を終えて〇〇日以内に必ず仮払金の精算をおこなう」などの社内ルールを作成し、従業員への周知を行いましょう。

 

費用の信憑性を確認する

仮払金は現金を先に従業員に渡すことになるため、実際に使っていない費用を使ったこととして申請するなど従業員が不正をおこなうリスクがあります。

そのため、従業員が申告した費用が実際に経費として使用されたものかどうかを領収書などで確認しましょう。

また、経費として利用したことを証明する書類が必要であることを事前に従業員へ周知しておくことも重要です。

 

仮払金をなくす手段

仮払金は従業員の自己負担を減らすことができる一方で、現金を準備したりなど経費処理が煩雑になりがちです。

仮払金をなくすことで、業務効率化が可能です。

従業員の自己負担を発生させずに仮払金をなくす方法を紹介します。

 

コーポレートカードの利用

会社の口座から引き落としされるクレジットカードを作成し、従業員へ配布しましょう。

最近はクレジット決済ができる交通手段や飲食店が増えています。

そのため、旅費や接待交際費の決済を従業員にコーポレートカードで行ってもらうことで、仮払金の運用をなくすことが可能です。

従業員全員のクレジットカードの発行・管理が手間な場合には、出張や接待がある営業部門の社員のみへのコーポレートカードの支給も考えられます。

 

会社専用交通系ICカードの利用

会社口座から引き落とされるSuicaなどのオートチャージ式のICカードを従業員へ渡せば、従業員の交通費を仮払いする必要はありません。

電車は頻繁に利用する移動手段のため、Suicaなどの導入は仮払金の経理処理をなくす有効な手段といえます。

 

まとめ

仮払金と立替金の違いを解説しました。仮払金と立替金は混合しやすいですが、役割や仕訳方法が異なります。

違いを確実に理解して、正しい仕訳を行いましょう。また、立替金は回収ができないリスク、仮払金は従業員の不正利用や経費処理の手間が発生します。

そのため、立替金や仮払金ができるだけ発生しない仕組み作りも重要です。できるだけ手間やリスクを軽減し、効率よく事業を行いましょう。

仕訳処理や税務処理は細かいルールが多く、すべてを調べて正しく処理をおこなうにはかなりの労力と時間を要します。

専門的なアドバイスが欲しい方や自分で調べている時間がない方、外注をしたい方はぜひ税理士などの専門家への依頼を検討してみてください。

サン共同グループでは、経費処理や税務処理などに関するご相談をお受けしています。

会社のお金のことで不安を抱えている方は税理士に相談し、事業に集中するのはいかがでしょうか?

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近藤 昴
このコラムを監修した税理士
近藤 昴サン共同税理士法人・横浜オフィス所長
東京地方税理士会 税理士登録:2013年 税理士登録番号:123285
2008年5月よりデロイト トーマツ税理士法人GES部門に勤務し、海外拠点を多く持つ日本・海外企業に対する国際人事異動に関するアドバイザリー業務などに従事。
2011年11月、ビジネスタックスサービス部門に異動し、約9年間勤務。マネジャーとして国内上場企業や外資系企業の税務コンサルティング業務及び税務コンプライアンス業務、税務顧問及び業務効率化提案などを行ってきた。
2020年12月、約12年間マネジャーとして勤務したデロイト トーマツ税理士法人を退職。
2021年1月にサン共同税理士法人に参画し、同月、横浜オフィス所長に就任。
>>プロフィールの詳細はこちら
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